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東京地方裁判所 昭和24年(ワ)1612号 判決 1957年3月22日

原告 日産生命保険相互会社

被告 大野木昇 外二六名

主文

第一、原告に対し

一、破産者伊藤斗福破産管財人は破産債権として金五万七百円及びこれに対する昭和二十四年五月二日から完済まで年五分の割合による金員を支払うこと。

被告鈴木正五郎、同石井仁助は破産者伊藤斗福破産管財人と連帯して内金二万五千三百円及びこれに対する右同日から完済まで年五分の割合による金員を支払うこと。

二、被告増田伝は金四万二千五百円及びこれに対する昭和二十四年五月二日から完済まで年五分の割合による金員を支払うこと。

被告鷲巣幸次郎、同増田亨は被告増田伝と連帯して内金二万一千二百円及びこれに対する右同日から、完済まで年五分の割合による金員を支払うこと。

三、被告河原崎定助は金一万九千八百円及びこれに対する昭和二十四年五月二日から完済まで年五分の割合による金員を支払うこと。

被告伊藤彰平、同谷口常雄は被告河原崎定助と連帯して内金九千九百円及びこれに対する右同日から完済まで年五分の割合による金員を支払うこと。

四、被告大西中は金二万六千六百円及びこれに対する昭和二十四年五月二日から完済まで年五分の割合による金員を支払うこと。

被告鷲巣国太郎、同熊崎福雄は被告大西中と連帯して内金一万三千三百円及びこれに対する右同日から完済まで年五分の割合による金員を支払うこと。

五、被告小沢真一は金三千一百円及びこれに対する昭和二十四年五月三日から完済まで年五分の割合による金員を支払うこと。

被告大石重三郎、同関千代は被告小沢真一と連帯して内金一千五百円及びこれに対する右同日から完済まで年五分の割合による金員を支払うこと。

六、被告長井世史は金四千二百円及びこれに対する昭和二十四年五月三日から完済まで年五分の割合による金員を支払うこと。

七、被告仲庄三郎は金一万五千六百円及びこれに対する昭和二十四年五月二日から完済まで年五分の割合による金員を支払うこと。

被告三島信治は被告仲庄三郎と連帯して内金七千八百円及びこれに対する右同日から完済まで年五分の割合による金員を支払うこと。

八、被告河村秀明は金二万七千二百円及びこれに対する昭和二十四年五月二日から完済まで年五分の割合による金員を支払うこと。

九、被告角田又治は金八千七百円及びこれに対する昭和二十四年五月二日から完済まで年五分の割合による金員を支払うこと。

被告志村九内は被告角田又治と連帯して内金四千三百円及びこれに対する右同日から完済まで年五分の割合による金員を支払うこと。

十、被告大川博は金二万二千七百円及びこれに対する昭和二十四年五月三日から完済まで年五分の割合による金員を支払うこと。

十一、被告二の関昇は金八千七百円及びこれに対する昭和二十四年五月五日から完済まで年五分の割合による金員を支払うこと。

十二、右の各被告に対する原告その余の請求を棄却する。

第二、被告大野木昇、鈴木春一、宇佐見鉄造、川口重三郎に対する原告の請求はいずれもこれを棄却する。

第三、訴訟費用は原告の負担とする。

第四、この判決は、原告において金五万円の担保を供するときは、破産者伊藤斗福の破産管財人に対する部分を除き、第一の一ないし十一に限り仮りに執行できる。

事実

原告の請求の趣旨及び原因

原告の請求の趣旨及び原因は、昭和三十年九月十日付請求の趣旨並原因訂正申立書引用に係る別紙記載のとおりである。

なお、原告は、本件融資条件付保険契約の募集は当時原告会社(日新生命保険相互会社と称していた)の取締役であつた被告大野木昇と京浜特設支社長であつた被告鈴木春一において計画主謀し、右特設支社の外務部次長であつた被告伊藤斗福、同増田伝、同、河崎定助、同大西中、同小沢真一、同長井世史、同仲庄三郎、同河村秀明、同角田又治、同大川博、同二の関昇がこれに協力し、右被告等は全員通謀して、融資条件付保険契約の募集は保険募集取締規則において禁止されており、従つて原告会社もその募集を承認しないことを熟知しながら、右募集によつて保険契約者から受領する第一回保険料を横領し、又は原告会社から会社の内規による募集給与金を詐取する意園の下に、右の融資条件付保険契約を募集したものであるから、右の被告等は共同不法行為者として、原告会社に対し連帯してこれによつて生じた損害を賠償する義務がある。なお、被告大野木に対する取締役としての任務違反による責任は本訴においてこれを訴求しないと述べ、また、被告伊藤斗福は昭和二九年五月七日東京地方裁判所において破産宣告を受け、長瀬秀吉外四名がその破産管財人に選任されたので、破産管財人に対して破産者伊藤の損害賠償義務の履行を求めると述べた。

被告等の答弁

第一、被告川口重三郎、同志村九内を除くその余の被告等(以下、被告大野木等という)の答弁

一、請求の趣旨に対する答弁

原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。との判決を求める。

二、請求の原因に対する認否

第一、第二の事実は認める。

第三、第四の事実は否認する。

第五の事実中、原告主張の被告等が原告主張の日にその主張のような保険契約の申込を受け、保険契約者及び原告会社から原告主張の保険料及び給与金を受取つた事実は認める。その余の点は否認する。

なお、被告伊藤が原告主張のような破産の宣告を受け、長瀬秀吉外四名がその破産管財人に選任されたことは認めるが、本件の融資条件付保険契約の募集が原告主張のような不法の目的の下になされたものであることは否認する。

三、被告大野木等の主張

(一)  融資条件付保険契約の募集は原告会社の承認を得て行われたものである。

被告鈴木春一は、昭和二十三年二月、原告会社に入社し、京浜特設支社長となつた者であるが、入社の際、当時原告会社の取締役兼東京営業部長として京浜特設支社の監督にあたつていた被告大野木から融資条件付保険契約の募集についてその承認をうけ、同被告の指揮監督の下に破産者伊藤斗福以下の相被告等を使用してこれが募集に当つていたのであつて、原告会社の江川社長も被告大野木と協議の上これを了承していたものである。すなわち、原告会社は、会社が直接保険契約者に融資することは法令の建前上できないが、被告鈴木が個人として保険契約者に融資するという条件で保険契約の募集をすることは差支あるまいという見解の下に、京浜特設支社において、いわゆる融資条件付で保険契約を募集することを承認し、京浜特設支社が契約者から収納する保険料のうち約四百万円を限度として随時これを契約者に対する貸付金に流用することを承認していたものであつて、被告鈴木等は原告会社の承認の下に融資条件付保険契約の募集にあたつていたのであるから、これを原告会社に対する共同不法行為であるという原告の主張はあたらない。

(二)  仮に本件融資条件付保険契約の募集につき原告会社の承認がなかつたとしても、原告会社は京浜特設支社において融資条件付保険契約の募集を行つていることを知りながら、これを黙認し、禁止の措置を採らなかつたのであるから、この点につき原告会社に過失がある。従つて、被告等に損害賠償の義務があるとすれば、被告等は過失相殺を主張する。

(三)  破産者伊藤及び被告増田、同河原崎、同大西、同小沢、同長井、同仲、同河村、同角田、同大川及び同二の関は京浜特設支社の外務員として支社長たる被告鈴木の指揮命令によつて融資条件付保険契約の募集をし、給与規程に基いて所定の給与金の支払をうけたものである。被告等は原告会社の正当な業務として融資条件付保険契約の募集にあたり、何ら不法の点はないと信じていたものであるから、原告会社において後日違法であるとして右の契約を取消しても、被告等には既に受領した給与金を返還する義務はない。又、右の給与金は給与規程に基いて受領したものであるから不当利得となるべきものでもない。その不法行為とならないこと勿論である。

第二、被告川口重三郎及び志村九内の答弁

一、請求の趣旨に対する答弁

原告の請求を棄却するとの判決を求める。

二、請求の原因に対する答弁

第一の事実は認めるが、原告主張のように身元保証人となつたことはない。その他被告等に関する部分は否認する。

証拠関係

一、原告

甲第一ないし第八号証の各一、二、第九、第十号証、第十一号証の一ないし七十四(但し、四十五、四十七は欠番、第十二号証、第十三号証の一ないし十五、第十四号証の一ないし九、第十五号証の一ないし十九、第十六号証の一ないし六、第十七号証の一ないし四、第十八号証の一ないし十八、第十九号証の一ないし三、第二十号証の一ないし十七、第二十一号証の一ないし三十四、第二十二号証の一、二、第二十三号証の一ないし十二(但し、六は欠番)、第二十四号証の一ないし三、第二十五号証の一ないし十六、第二十六号証の一、二、第二十七号証の一ないし十、第二十八号証の一ないし三、第二十九号証の一ないし六、第三十号証の一ないし九を提出し、

証人長谷川公一、同東中川秀敏(第一ないし第三回)、同篠崎孝、同本田勇(第一ないし第三回)、同稲葉貞利、同向原太平次の各証言を援用し、

乙第一号証の成立は知らない。第二、第三号証の成立は認める。第四、第五号証の成立は知らない。第六号証の成立は認める。

二、被告大野木等

乙第一ないし第六号証を提出し、

証人長谷川公一、同東中川秀敏(第一回)、同篠崎孝、同本田勇(第一回)、同鶴谷亀三男、同斉藤辰男、同増山健太郎、同皆川一郎右衛門、同高久斌並びに被告大野木昇(第一ないし第四回)、同鈴木春一(第一ないし第四回)、同仲庄三郎、同河原崎定助、同鷲巣幸次郎、同三島信治、同鷲巣国太郎(第一、第二回)、同宇佐見鉄造、同増田伝(第一、第二回)の供述を援用し、甲第一ないし第八号証の各一、二、第九、第十号証、第十一号証の一、三、五、七、八、十一、十三、十五、十七、十九、二十二、二十四、二十六、二十八、三十、三十三、三十六、三十九、四十一ないし四十四、四十六、四十九、五十一、五十三、五十五、五十七、五十九、六十一、六十三、六十五、六十七ないし六十九、七十一、七十三、七十四、第十三号証の一、三、五、七、八、十ないし十二、十四、十五、第十四号証の一、四、六、九、第十五号証の二、五、七、九、十一、十三、十五、十七、第十六号証の一、五、第十七号証の一、三、第十八号証の一、五、七、十一、十三、十五、十七、第十九号証の一、第二十号証の一、三、五、七、九、十一、十三、十五、第二十一号証の一、三、五、七、九、十一、十二、十四、十六、十八、二十、二十二、二十四、二十五、二十七、二十九、三十一、第二十二号証の一、第二十三号証の一、三、五、七、九、十一、第二十四号証の一、第二十五号証の一、三、五、八、十一、十三、十六、第二十六号証の一、第二十七号証の一、三、六、八、十、第二十八号証の三、第二十九号証の一、三、六、第三十号証の一、三、六、八、九の成立を認めその他の甲号証の成立は知らない。

三、被告志村九内

証人近藤幾代の証言及び被告志村の供述を援用する。

甲第八号証の二の成立を否認する。その他の甲号証の成立は知らない。

四、被告川口重三郎は証拠を提出せず、甲号証の認否をしない。

理由

第一、被告等の職務関係と身元保証について。

原告会社は、もと日新生命保険相互会社と称し、生命保険事業を営む相互会社である。

被告大野木昇は原告会社の取締役であつて、昭和二十二年四月東京営業部長に就任し、昭和二十三年九月七日退社したものであつて、その職務権限は東京営業部所属支社の保険契約の募集に関する業務並びにこれに伴う経理事務の指揮監督である。

被告鈴木春一は昭和二十三年二月一日被告大野木の指揮監督する東京営業部所属の京浜特設支社長に就任し、同年九月七日解職されたものであるが、その職務権限は右支社所属の外務職員の保険契約の募集を指揮監督することである。破産者伊藤斗福、被告増田伝、同河原崎定助、同大西中、同小沢真一、同長井世史、同仲庄三郎、同河村秀明、同角田又治、同大川博、同二の関昇は、昭和二十三年二月被告鈴木の指揮監督する京浜特設支社の外務次長に就任し、同年九月十一日解職されたものであるが、その職務権限は自ら保険契約の募集に当ると共に所属外務職員の契約募集を指揮監督することである。

被告宇佐美鉄造は被告鈴木春一のため、被告鈴木正五郎、同石井仁助は破産者伊藤斗福のため、被告鷲巣幸次郎、同増田亨は被告増田伝のため、被告伊藤彰平、同谷口常雄は被告河原崎定助のため、被告鷲巣国太郎、同熊崎福雄は被告大西中のため、被告大石重三郎、同関千代は被告小沢真一のため、被告三島信治は被告仲庄三郎のため、いずれも原告会社に対し身元保証をしたものである。

以上の事実は当事者間に争いがない。

証人本田勇(第一回)の証言により真正に成立したと認められる甲第一号証の一、二によれば、被告川口重三郎は被告鈴木春一の身元保証人であることが認められ、また、証人近藤幾代及び被告志村九内の供述並びに右本田証人の証言により真正に成立したと認められる甲第八号証の一、二によれば、被告志村は被告角田又治の身元保証人であることが認められる。そして、右の甲第一、第八号証の各一、二及び被告大野木等との関係において成立に争いない甲第一ないし第七号証の各一、二によれば、右の身元保証人は本人が会社に及ぼした損害につき本人と連帯して会社に対してその損害を賠償すべき旨を約した事実を認めることができる。

第二、被告等の責任の有無

一、本件の融資条件付保険契約の募集を原告会社に対する不法行為とみることはできない。

原告会社京浜特設支社の外務次長である破産者伊藤斗福及び被告増田外九名の前記被告等が融資条件付保険契約の募集をしたことは当事者間に争いない。もつとも被告大野木等は右の保険契約は原告会社ではなく、被告鈴木が個人として融資することを条件としたものであるというが、成立に争いない甲第十号証及び被告鈴木の供述(第四回)によれば、被告鈴木個人としてゞはなく京浜特設支社において融資することを条件として募集したものであることがわかるので、被告等の右の主張は採用しない。

保険会社が融資条件付で保険契約を募集することは保険募集取締規則でも禁止されている。従つてかゝる方法で保険の募集をし契約成立後にそれが違法な契約であることを理由として保険契約が取消され契約者に損害が生じたような場合には、会社及び募集にあたつた外務員は契約者に対し不法行為による損害賠償義務があるといわなければならないし、会社の取締役が外務員をしてかゝる保険募集を行わせた場合にはその取締役は会社に対して任務違反による損害賠償義務のあることも亦明かであるが、それが保険会社に対しても不法行為になるかどうかは別に考えなければならない。しかして本件の融資条件付保険契約の募集が原告会社の取締役であり、且つ、東京営業部長として京浜特設支社の保険募集について指揮監督をなすべき地位にある被告大野木の承認を得て行われたものであることは当事者間に争のないところであつて、被告大野木、同鈴木(いずれも第一ないし第四回)、同仲庄三郎、同河原崎定助、同増田伝(第一、第二回)の各供述を総合すれば、被告大野木及び鈴木は他社においても融資条件付で保険契約の募集をしているとの風評を聞知して、保険募集の成績をあげ、原告会社の業績を高めるための方策として、それが違法なものであることを知りながら、京浜特設支社において融資条件付の保険募集を行うことを企画し、原告会社の業務として外務員にこれを実行せしめたものであつて、外務員たる前記被告等も原告会社が正規に承認したものと思料してその募集にあたつたものであることが認められる。原告はこの点について被告大野木以下の右被告等は第一回保険料を横領し、募集給与金を詐取するために融資条件付保険契約の募集を行つたものであると主張するが、これを認むべき資料がないのみならず、被告大野木、同鈴木(いずれも第四回)、同増田(第二回)の各供述によれば被告等にかゝる不法な目的のなかつたことが認められ、他にこの認定を左右すべき資料はない。従つて原告の右の主張は採用できない。本件の融資条件付保険契約の募集は客観的にこれをみれば原告主張のとおり正に違法な行為であるが、右に認定したように被告大野木は原告会社の取締役として、被告鈴木及び前記外務員たる被告等はいずれも原告会社の被用者としてそれぞれの職務行為としてこれを行つたものであるから、原告会社との契約関係に基ずく任務違反による責任の有無は別論として、この責任と別個に不法行為による責任を云々すべき余地は全くないものと解するのが相当である。なお、被告等の違法性の認識は任務違反による責任を問題とする場合に故意又は過失として評価さるべき要素であつて、違法の認識があるからといつて直ちにこれを不法行為とすることはできない。従つて本件融資条件付保険契約の募集が被告大野木、鈴木等の原告会社に対する共同不法行為であることを前提とする原告の請求は、爾余の判断をするまでもなく、その理由がない。

二、被告等には横領、詐欺による責任もないし、不当利得の返還義務もない。

原告は、被告鈴木及び外務員たる前記被告等が多額の保険料を横領したと主張する。証人本田勇(第一回)の証言により真正に成立したと認められる乙第一号証、証人長谷川公一、同向原太平次、同東中川秀敏(第二回)、同篠崎孝、同本田勇(全三回)、被告大野木昇(全四回)及び同鈴木春一(全四回)の各供述によれば、被告等が横領したと原告の主張する保険料が京浜特設支社から原告会社へ入金されてないことが認められるが、右の被告大野木及び鈴木の供述によれば、被告鈴木は被告大野木の諒承を得て保険料の一部を契約者に対する貸付金に流用して融資条件付保険契約の募集をしていたものであつて、本社へ入金のなかつた保険料は契約者への貸付資金に使用されたものであることが認められ、他に右認定を左右するに足る証拠はない。しかして、本件融資条件付保険契約の募集は、前記のとおり、原告会社のためにその事業の執行としてなされたものであるから、保険料を貸付資金に使用したからといつてこれを被告鈴木等の横領ということはできない。また、本件の融資条件付保険契約の募集は担当取締役たる被告大野木の指揮監督の下に行われたものであるから(この点は被告鈴木の第四回供述のうちに最も明瞭にあらわれている。)、外務員たる被告等の募集給与金の取得をもつて原告のいうように原告会社に対する詐欺による騙取行為とすることはできないし、また、それが契約成立の報酬として給与されたものである以上、不当利得にあたらないことも多く説明を用いずして明らかである。

三、被告大野木及び鈴木には部下に対する監督不行届による責任もない。

原告は被告大野木及び鈴木に対して監督不行届を理由として損害の賠償を求めているが、この点に関する具体的な主張も立証もないので、この部分も亦排斥を免かれない。

四、外務員たる被告等は融資条件付保険契約の募集によつて取得した給与金の一部を返還する義務がある。

原告は外務員たる破産者伊藤その他の被告等は融資条件付保険契約を募集して原告会社から所定の給与金の支給をうけているが、原告会社はこれらの契約を不正契約として取消し契約者に保険料を返還したから、右の被告等は給与規程の定めるところによりその受領した給与金を原告会社に戻入すべき義務があると主張するので、この点について判断する。

一部については成立に争いなく、争いのある部分は証人篠崎孝の証言により成立を認め得る甲第十一号各証及び同第十三ないし第三十号各証、証人長谷川公一、同東中川秀敏(第一回)、同篠崎孝、同本田勇(第一回)の各供述によれば、京浜特設支社においては融資条件付保険契約に応募した契約者に対して約定の貸付を実行することができなかつたため、契約者が原告会社に対し保険料の返還を要求する等のことがあり、事態が紛糾してきたので、原告会社ではこれを違法不正な契約として、大部分の契約者に対しては保険料の全額を返還して契約を解約し、一部の契約者に対しては融資条件付保険契約の保険金額の一部を正常な保険契約に変更してこれを存続せしめ、残余の部分は保険料を返還して解約する措置をとつたことが認められ、また、証人東中川秀敏(第三回)の証言及び右証言により成立を認めうる甲第十二号証、被告大野木の第四回の供述によれば、原告会社には給与規程附則取扱細則(甲第十二号証)が定められており、各社員は右細則を了知してその職務に従事しているのであること及び右細則は第一項において、「左の場合にありては募集社員及びその所属上職員が当該契約成立に因りて受けたる諸給与の全部を戻入せしむ。(イ)会社が契約を解除又は取消したとき、(ロ)被保険者が契約成立前に発病又は死亡し居りたるとき、(ニ)その他募集上不正不都合ありと認めたるとき」と定められておることが認められる。しかして本件の融資条件付保険契約の募集は保険募集取締規則でも禁止されている行為であるから、原告会社がこれを前記のように違法不正な契約として解約した以上、右の募集によつて給与金の支給をうけた被告等はこれを原告会社へ戻入すべき義務があるものといわなければならない。被告大野木(第四回)の供述中右認定に反する部分は採用しない。この点につき被告大野木等は、本件融資条件付保険契約の募集については原告会社の承認があつたものであるから何らの募集上不正不都合はなく、給与金返還の義務はないと抗争するけれども、被告大野木(第四回)及び証人東中川(第三回)の供述並びに弁論の全趣旨によれば、本件の融資条件付保険契約の募集については江川社長の承認があつたかどうかはしばらく別にして、役員会の承認もなく、各取締役の個別的な承認もなかつたものであることが認められるので(各取締役の了承があつた旨の被告大野木の供述は措信しない)、会社の承認があつたことを前提とする被告等の主張は採用できない。融資条件付保険契約の募集は違法不正な行為であるから、会社がこれを解約した場合には、その募集によつて受けた給与金は前記細則(イ)及び(ニ)によつてこれを会社に戻入すべきものと解しなければならない。

ところで、前記細則は第一項で「募集社員及びその所属上職員が当該契約成立に因つて受けたる諸給与の全部を戻入せしむ」と定め、第五項で「本細則に依り戻入を要すべき諸給与は事情の如何に拘らず之が戻入免除の取扱をなさず」と定めているが、これらの規定は、条理上、例えば募集社員が故意に既に死亡し又は発病している者を被保険者とする保険契約を募集した場合のようにその戻入原因が専ら募集社員についてのみ存する場合の規定であつて、戻入原因ないしは戻入義務の発生について会社の側においても責むべき点がある場合には、募集社員はその事情如何によつて諸給与の全部又は一部についてその返還の義務を免かれるものと解するのが相当である。のみならず、民法は債務不履行及び不法行為については過失相殺の制度を認めている。その趣旨とするところは、債権者ないしは被害者の側において損害の発生又はその拡大について責むべきものがあるときは損害賠償の責任の有無及びその程度についてこれを斟酌し、よつてもつて公正な解決をはかろうとする点にあるのだから、この法理は条理上本件の場合のように戻入義務の発生ないしはその範囲について会社の側においても責むべきものがある場合にもこれを類推し、会社側のいわゆる過失を参酌して募集社員の戻入義務の有無及びその程度を定めるのが相当であると考える。

よつて、原告会社側のいわゆる過失の有無を判断するに、本件融資条件付保険契約の募集が原告会社の担当取締役たる被告大野木の指揮監督の下に原告会社の業務としてなされ、外務次長たる被告等は原告会社においてもその募集を承認したものであると考えてこれを行つたものであることは前段認定のとおりである。しかも、被告大野木(全四回)、同鈴木(全四回)、同増田伝(全二回)の各供述に弁論の全趣旨を加えて考察すれば、原告会社の当時の社長江川武は、被告大野木及び鈴木の進言を容れ、京浜特設支社において融資条件付保険契約の募集をすることを暗に承認していた節が十分に疑われるので、外務員たる被告等において会社の承認があつたものと思料したことについては無理からぬ事情があつたものといわなければならない。又、成立に争いない乙第六号証、証人長谷川公一、同東中川秀敏(全三回)、同向原太平次の各証言によれば、原告会社が京浜特設支社において融資条件付保険契約の募集をしていることを聞知したのは昭和二十三年七月初頃であるが、原告会社はその頃被告大野木を呼んで善処方を要求し、同人も善処を約したものの、その後も契約者から苦情の申出が絶えなかつた。しかるに原告会社は同年八月末頃になつて初めて事態の重大さを認めて役員会を開いて善後策を協議し、監査役東中川秀敏、同向原太平次を京浜特設支社へ調査に赴かしめ、同年九月六日に初めて支社に対し募集中止の命令を発した事実が認められ、他に右認定を動かすに足る確証はない。これによれば原告会社の調査及び禁止の措置も迅速適切を欠いていたものといわねばならない。

以上の諸点は原告側における過失と認むべきものであり、ことに本件融資条件付保険契約の募集が原告会社の担当取締役たる被告大野木の指揮監督の下に原告会社の業務としてなされたものである点において極めて重大である。これらの諸点を参酌すれば給与金受領者たる被告等の給与金返還義務の範囲は、戻入すべき金額の約一割をもつて足るものと認めるのが相当であり、また、身元保証人たる被告等の責任は更にの半額程度をもつて足ると認めるのが相当である。

原告は、被告鈴木は原告会社の給与規程の定めるところにより外務員たる被告等の給与金返還義務につき連帯責任があると主張する。前記細則には、その第四項に「本細則に依り戻入を要すべき諸給与は支店支社長責任をもつて当該募集社員及び所属上職員より一ケ月以内に戻入せしむることを要し、もし之が戻入を怠りたるときは、支店支社長の責任として処理すべきものとす」と定められているが、証人東中川(第三回)の証言によれば、右にいう支社長の責任として処理するというのは、本人を追求するなりその身元保証人の責任を問うなり、上司として部下の責任追求のために適切な措置をとることを要するという趣旨であつて、決して支社長自ら戻入金支払義務を負担する意味でないことが認められるので、この点の原告の主張は理由がない。なお、証人東中川の右証言によれば、前記細則による募集社員の給与金戻入義務については取締役は何等の責任を負わないものであることが認められるので、取締役たる被告大野木に対しても外務員たる被告等の給与金戻入義務につきその責任を問うことはできないものといわねばならない。

五、以上の次第であるから、被告大野木及び鈴木並びに被告鈴木の身元保証人たる被告宇佐美鉄造及び川口重三郎に対しては原告が本訴において主張する請求原因によつてはその責任を問うに由なきものといわなければならないから、これらの被告に対する原告の請求はこれを棄却するの外なく、その余の被告等は、右に判断したとおり、給与金の一部についてのみこれを原告会社に返還する義務があり、その他の原告の請求はすべて理由のないものと考える。

第三、外務員及びその身元保証人たる被告等の責任金額

破産者伊藤斗福の戻入すべき給与金(原告側に過失なく、受領者において全額を返還しなければならないと仮定した場合における金額をいう。以下同じ。)の合計が金五十万七千五百円であることは当事者間に争がないから、前記の標準に従つて、伊藤の破産管財人たる被告長瀬秀吉、同小林一郎、同大山菊治、同金末多志雄、同松本正雄は原告に対し破産債権として金五万七百円を支払うべき義務があり、また右伊藤の身元保証人たる被告鈴木正五郎同石井仁助は金二万五千三百円を右破産管財人たる被告等と連帯して原告に対し支払う義務がある。

被告増田伝の戻入すべき給与金の合計が金四十二万五千七百円であること(他の被告等と共同で戻入すべきものについてはその頭数によつて平等の割合で按分すべきものである。以下同じ。)被告河原崎定助のそれが金十九万八千七百五十円であること、被告大西中のそれが金二十六万六千六百円であること、被告小沢真一のそれが金三万一千六百円であること、被告長井世史のそれが金四万二千五百円であること、被告仲庄三郎のそれが金十五万六千六百円であること、被告河村秀明のそれが金二十七万二千八百五十円であること、被告角田又治のそれが金八万七千五百円であること、被告大川博のそれが金二十二万七千五百円であること、被告二の関昇のそれが金八万七千五百円であることはいずれも被告志村を除く他の当事者間に争なく、被告志村との関係において被告角田の戻入すべき給与金の合計が金八万七千五百円であることは右の争いのない事実からこれを認める。

従つて、前記標準に従つて、原告会社に対して、被告増田伝の支払うべき金額は金四万二千五百円、同被告の身元保証人たる被告鷲巣幸次郎及び増田亨が被告増田伝と連帯して支払うべき金額は金二万一千二百円、被告河原崎定助の支払うべき金額は金一万九千八百円、同被告の身元保証人たる被告伊藤彰平及び谷口常雄が被告河原崎と連帯して支払うべき金額は金九千九百円、被告大西中の支払うべき金額は金二万六千六百円、同被告の身元保証人たる被告鷲巣国太郎及び熊崎福雄が被告大西と連帯して支払うべき金額は金一万三千三百円、被告小沢真一の支払うべき金額は金三千一百円、同被告の身元保証人たる被告大石重三郎及び関千代が被告小沢真一と連帯して支持うべき金額は金一千五百円、被告長井世史の支払うべき金額は金四千二百円、被告仲庄三郎の支払うべき金額は金一万五千六百円、同被告の身元保証人たる被告三島信治が被告仲と連帯して支払うべき金額は金七千八百円、被告河村秀明の支払うべき金額は金二万七千二百円、被告角田又治の支払うべき金額は金八千七百円、同被告の身元保証人たる被告志村九内が被告角田と連帯して支払うべき金額は金四千三百円、被告大川博の支払うべき金額は金二万二千七百円、被告二の関昇の支払うべき金額は金八千七百円をもつて相当と認める。

しかして、右の被告等に対する訴状がそれぞれ主文第一に記載した日の前日(連帯債務者に対してはそのうちの一人に最初に訴状が送達されたときに訴訟上の請求があつたものとみるべきものである)に送達されていること一件記録により明白であるから、右の被告等はいずれも右に掲記した日から年五分の割合による損害金を附加してこれが支払をなす義務がある。

よつて、右の限度において原告の請求を理由ありと認め、その余はすべてこれを棄却すべきものとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第九十二条但書、仮執行の宣言につき同法第百九十六条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 石井良三 岩村弘雄 石川良雄)

請求の趣旨

原告に対し

一、(イ) 被告大野木昇、鈴木春一、伊藤斗福は連帯して、被告鈴木春一、川口重三郎、宇佐美鉄造は連帯して、被告伊藤斗福、鈴木正五郎石井仁助は連帯して、夫々金三百四十六万五百四十円

(ロ) 被告大野木昇、鈴木春一は連帯して、被告鈴木春一、川口重三郎宇佐美鉄造は連帯して夫々金六万二千九百円

二、(イ) 被告大野木昇、鈴木春一、増田伝は連帯して、被告鈴木春一、川口重三郎、宇佐美鉄造は連帯して、被告増田伝、鷲巣幸次郎、増田亨は連帯して夫々金三十四万六千五百円

(ロ) 被告大野木昇、鈴木春一は連帯して、被告鈴木春一、川口重三郎、宇佐美鉄造は連帯して夫々金二万五千二百五十円

三、被告大野木、鈴木春一、増田伝、河原崎定助は連帯して、被告鈴木春一、川口重三郎、宅佐美鉄造は連帯して、被告増田伝、鷲巣幸次郎、増田亨は連帯して、被告河原崎定助、伊藤彰平、谷口常雄は連帯して金四十三万二千円

四、被告大野木昇、鈴木春一、河原崎定助は連帯して、被告鈴木春一、川口重三郎、宇佐美鉄造は連帯して、被告河原崎定助、伊藤彰平、谷口常雄は連帯して金五十万六千四百五十円

五、被告大野木昇、鈴木春一、河原崎定助、大西啓介は連帯して、被告鈴木春一、川口重三郎、宇佐美鉄造は連帯して、被告河原崎定助、伊藤彰平、谷口常雄は連帯して、被告大西啓介、鷲巣幸次郎、熊崎福雄は連帯して金十四万四千五百円

六、被告大野木昇、鈴木春一、大西啓介は連帯して、被告鈴木春一、川口重三郎、宇佐美鉄造は連帯して、被告大西啓介、鷲巣国太郎、熊崎福雄は連帯して金三十万五百円

七、被告大野木昇、鈴木春一、増田伝、大西啓介は連帯して、被告鈴木春一、川口重三郎、宇佐美鉄造は連帯して、被告増田伝、鷲巣幸次郎、増田亨は連帯して、被告大西啓介、鷲巣国太郎、熊崎福雄は連帯して金七十六万八千二百円

八、被告大野木昇、鈴木春一、増田伝、大西啓介、小沢真一は連帯して被告鈴木春一、川口重三郎、宇佐美鉄造は連帯して、被告増田伝、鷲巣幸次郎、増田亨は連帯して、被告大西啓介、鷲巣国太郎、熊崎福雄は連帯して、被告小沢真一、大石重三郎、関千代は連帯して金五万円

九、被告大野木昇、鈴木春一、小沢真一は連帯して、被告鈴木春一、川口重三郎、宇佐美鉄造は連帯して、被告小沢真一大石重三郎関千代は連帯して金三十九万九千四百円

一〇、被告大野木昇鈴木春一長井世史は連帯して、被告鈴木春一川口重三郎宇佐美鉄造は連帯して金八十一万二千八百二十円

一一、被告大野木昇鈴木春一仲庄三郎は連帯して、被告鈴木春一川口重三郎宇佐美鉄造は連帯して、被告仲庄三郎三島信治は連帯して金三万八千円

一二、被告大野木昇鈴木春一河村秀明は連帯して、被告鈴木春一川口重三郎宇佐美鉄造は連帯して金三十三万三千五百七十円

一三、被告大野木昇鈴木春一大西啓介河村秀明仲庄三郎は連帯して、被告鈴木春一川口重三郎宇佐美鉄造は連帯して、被告大西啓介鷲巣国太郎熊崎福雄は連帯して、被告仲庄三郎三島信治は連帯して金百万円

一四、被告大野木昇鈴木春一仲庄三郎河村秀明は連帯して、被告鈴木春一川口重三郎宇佐美鉄造は連帯して、被告仲庄三郎三島信治は連帯して金六十二万八千七百五十円

一五、被告大野木昇鈴木春一仲庄三郎河村秀明増田伝は連帯して、被告鈴木春一川口重三郎宇佐美鉄造は連帯して、被告仲庄三郎三島信治は連帯して、被告増田伝鷲巣幸次郎増田亨は連帯して金十四万五百円

一六、被告大野木昇鈴木春一角田又治は連帯して、被告鈴木春一川口重三郎宇佐美鉄造は連帯して、被告角田又治志村九内は連帯して金三十一万七千七百九十五円

一七、被告大野木昇鈴木春一角田又治増田伝は連帯して、被告鈴木春一川口重三郎宇佐美鉄造は連帯して、被告角田又治志村九内は連帯して、被告増田伝鷲巣幸次郎増田亨は連帯して金二万五千円

一八、被告大野木昇鈴木春一大川博は連帯して、被告鈴木春一川口重三郎宇佐美鉄造は連帯して金三十一万千百四十円

一九、被告大野木昇鈴木春一二の関昇は連帯して、被告鈴木春一川口重三郎宇佐美鉄造は連帯して金十五万八千七百九十円

及右金員に対する本訴状送達の翌日より完済まで年五分の割合による金員を附加して支払うべし

訴訟費用は被告等の負担とする。

との御判決並に右判決に対し担保を条件とする仮執行の宣言を求める。

請求の原因

第一、原告は生命保険事業を営む相互会社である。

第二、(一)(イ)被告大野木昇は昭和二十二年四月原告会社の東京営業部長に就任し同二十三年九月七日退社したものであるがその間の職務権限は東京営業部所属支社の保険契約の募集に関する業務並にこれに伴う経理事務の指揮監督である。

(ロ)被告鈴木春一は昭和二十三年二月一日被告大野木の指揮監督する東京営業部に所属する京浜特設支社長に就任し同年九月七日解職されたものであるがその職務権限は右支社所属外務職員の保険契約の募集を指揮監督する職員である。

(ハ)被告伊藤斗福同増田伝同河原崎定助同大西啓介同小沢真一同長井世史同仲庄三郎同河村秀明同角田又治同大川博同二の関昇等は昭和二十三年二月被告鈴木の指揮監督する京浜特設支社の外務次長に就任し同二十三年九月十一日解職されたものでその職務権限は自ら保険契約の募集に当ると共に所属外務職員の契約募集を指揮監督するものである。

(ニ)被告川口重三郎同宇佐美鉄造は被告鈴木春一

被告鈴木正五郎同石井仁助は被告伊藤斗福

被告鷲巣幸次郎同増田亨は被告増田伝

被告伊藤彰平同谷口常雄は被告河原崎定助

被告鷲巣国太郎同熊崎福雄は被告大西啓介

被告大石重三郎同関千代は被告小沢真一

被告三島信治は被告仲庄三郎

被告志村九内は被告角田又治

のため各原告会社に対し身元保証をしたものである(甲第 号証)

第三、被告大野木昇鈴木春一伊藤斗福増田伝河原崎定助大西啓介小沢真一長井世史仲庄三郎河村秀明角田又治大川博二の関昇等は原告会社に在勤中の昭和二十三年四月以降同年九月初までの間に相通謀して

融資条件附保険契約は法的にも保険募集取締規則に於て禁止されて居り且つ原告会社もその募集を承認しないことを熟知しながら擅に募集に関する印刷物を作成頒布して原告会社に於て融資条件附保険契約を募集している如く装い生命保険に加入すれば保険金額の二割相当額まで金員を貸付する旨申込者を欺いて申込を受け原告会社の真正な領収書を発行して保険料を受領し融資条件附保険契約の募集をしたものである(甲第十乙第四、五号証)

而して右被告等は前記不正手段によつて募集加入させて受領した保険料を或は擅に横領費消し或は原告会社に対し正当な契約の如く報告して誤信させ原告会社の内規による給与金を受領したものである。

第四、右被告等が募集した融資条件附保険契約は原告会社不知の間にひそかに締結したものであるため契約者に対し約定の貸付ができなかつたので各契約者は原告会社に対し契約の取消を要求するもの続出し原告会社は被告等が受領した保険料の大半は横領費消し或は給与金(保険料の約半額)を勝手に控除して残額を納付したに過ぎなかつたので契約の取消により一時に多額の金員を返還することとなり甚しく困惑したが原告会社としては被告等の不正行為のため保険料の入金の有無にかかわらず契約者に対しては責任があること当然であるから已を得ず正当領収書を発行して受領した保険料の全額を返還した外契約者に与えた損害金を支払つたものである。

第五、而して被告等の前記不正行為に因り原告会社の蒙つた損害は次のとおりである。

(イ) 被告伊藤斗福は

(1)  昭和二十三年六月三日訴外谷口正治より保険金額六百万円の融資条件付保険契約の申込を受け原告会社の領収書を以て保険料金二十三万千三百円を受取り被告鈴木は右保険金額の中金四百三十万円に相当する保険料金五万四千九百円及被告伊藤に給与すべき金十万七千五百円合計金十六万二千四百円を立替え入金した。

ところが右契約は融資条件付契約のため取消され原告会社は被告伊藤の受領した保険料全額を返還した(甲第十号証の一)

右被告伊藤が受領した保険料と被告鈴木が入金した金十六万二千四百円との差額金六万八千九百円は被告伊藤が横領したものである。

これがため原告会社は被告伊藤の横領金六万八千九百円給与金十万七千五百円合計金十七万六千四百円相当の損害を受けた。

(2)  同年五月二十四日訴外堀内幸行より保険金額百二十万円の前同保険契約の申込を受け前同方法で保険料金六万円を受取り内金一万四千円を被告鈴木に渡し残額四万六千円は入金せず(甲第十号証の二)被告鈴木は右金一万四千円と被告伊藤に給与すべき金二万五千円立替金一万一千円計金五万円を入金した。

ところが右契約も前同様取消され保険料全額を返還した。

右被告伊藤が受領した保険料と被告鈴木が入金した金五万円の差額金一万円は被告伊藤の横領額である。

これがため原告会社は被告伊藤の横領金一万円と給与金二万五千円計金三万五千円の損害を受けた。

(3)  同年六月五日訴外三興商社より保険金額三百万円の前同様保険契約の申込を受け前同方法で保険料金十二万九千円を受取り原告会社に入金せず(甲第十号証の三)被告鈴木は被告伊藤に給与すべき金七万五千円立替金五万四千円計金十二万九千円を入金した。

ところが右契約は前同様取消され保険料全額を返還した。

これがため原告会社は給与金七万五千円相当の損害を受けた。

(4)  同年六月十六日訴外前田豊秀より保険金額二百万円の保険契約の申込を受け前同方法で保険料金八万八千円を受取り内金五万円を被告鈴木に渡し残額金三万八千円を横領した(甲第十号証)被告鈴木は右金五万円中金二万五千円を給与金として被告伊藤に支給し金六千円を横領し残額金一万九千円のみを入金した。これがため原告会社は右被告両名の横領金計四万四千円の損害を受けた。

(5)  同年六月二日訴外慶友社より保険金額三百万円の前同保険契約の申込を受け前同方法で保険料金十二万九千円を受け取り(甲第十号証の四)内金八万四千円を被告鈴木に渡し残額金四万五千円は入金せず被告鈴木は右金八万四千円に被告伊藤のために金四万七百円を立替え計金十二万四千七百円を入金した。そして原告会社は右契約に対する給与金七万二千五百円を被告伊藤に支払つた。

ところが右契約も前同様取消され保険料全額を返還した。

右保険料十二万九千円と被告鈴木の入金した金十二万四千七百円との差額金四千三百円は被告伊藤の横領したものである。これにより原告会社は右横領金四千三百円と給与金七万二千五百円計金七万六千八百円相当の損害を受けた。

(6)  同年五月二十日訴外小泉新太郎より保険金額二百万円の前同保険契約の申込を受け前同様方法で保険料金七万八千円を受取りこれを横領した(甲第十号証の五)

被告鈴木は右につき保険金額百万円保険料金三万九千円の契約の如く装い被告伊藤に給与すべき金二万五千円と立替金一万四千円計金三万九千円を入金した。

右契約も取消され原告会社は保険料全額を返還した。

これがため原告会社は横領金三万九千円と給与金二万五千円計金六万四千円相当の損害を受けた。

(7)  同年七月五日訴外喜多川組より保険金額二百万円の前同保険契約の申込を受け前同方法で保険料金九万二千円を受取り中金四万五千円を被告鈴木に渡し、同被告はその中金三千円を被告伊藤に渡し同被告が保留した金四万七千円と合せて金五万円を同被告の給与金として支給し残額金四万二千円を入金した。

ところが右契約も前同様取消され保険料全額金九万二千円を返還し且つ損害補償金として二千十四円八十銭計金九万四千十四円八十銭を支払つた(甲第十号の六乃至一〇)

これがため原告会社は給与金五万円と損害補償金二千十四円八十銭計金五万二千十四円八十銭の損害を受けた。

(8)  同年七月三日訴外西本組より保険金額四百万円の前同保険契約の申込を受け前同方法で保険料金十七万千八百円を受取つて被告鈴木に渡し同被告は中金九万五千円を給与金として被告伊藤に支給し金六万八千二百円を原告会社に入金し残金八千六百円を横領した。

右契約も前同様取消され保険料全額を返還した。

これがため原告会社は被告鈴木の横領金八千六百円と被告伊藤の給与金九万五千円計金十万三千六百円相当の損害を受けた(甲第十号証の一一)

(9)  同年六月十五日訴外鳥井利一より保険金額百万円の前同保険契約の申込を受け前同方法で保険料四万三千円を受取つて被告鈴木に渡し同被告は中金二万五千円を給与金として被告伊藤に支給し残金一万八千円を入金した。

右契約も前同様取消され保険料全額を返還した(甲第十号証の一二)

これがため原告会社は被告伊藤の給与金二万五千円相当の損害を受けた。

(10) 同年七月三十一日訴外野沢仙太郎より保険金額四百万円の前同保険契約の申込を受け前同方法で保険料金十九万七千六百円を受取つて中金十八万七千六百円を被告鈴木に渡し残金一万円を横領した。

被告鈴木も右金十八万七千六百円を入金せず横領した。

右契約も前同様取消され保険料全額を返還した(甲第十号証の一三)

これがため原告会社は被告両名の横領金十九万七千六百円相当の損害を受けた。

(11) 同年八月二十日訴外日本産業株式会社より保険金額二百五十万円の前同保険契約の申込を受け前同方法で保険料金十万七千五百円を受取つて中金五万円を横領し残金五万七千五百円を被告鈴木に渡したところ同被告もこれを横領した。

右契約も前同様取消され保険料全額を返還した(甲第十号証の一四)

これがため原告会社は被告両名の横領金十万七千五百円相当の損害を受けた。

(12) 同年八月四日訴外東邦水産より保険金額七百五十万円の前同保険契約の申込を受け前同方法で保険料金三十四万七千五百円を受取り中金十万円を横領し残金二十四万七千五百円を被告鈴木に渡し同被告もこれを横領した。

右契約も前同様取消され保険料全額を返還した(甲第十号証の一五、一六)

これがため原告会社は被告両名の横領金三十四万七千五百円相当の損害を受けた。

(13) 同年七月三十一日訴外浅海組より保険金額三百万円の前同保険契約の申込を受け前同方法で保険料金十四万六千六百円を受取りこれを横領した。

右契約も前同様取消され保険料全額を返還した(甲第十号証の一七)

これがため原告会社は横領金十四万六千六百円相当の損害を受けた。

(14) 同年八月五日訴外持田製薬より保険金額二千八百万円の前同保険契約の申込を受け前同方法で保険料金百二十二万九千五百を受取り中金五十四万七千七百円を横領し残金六十八万千八百円を被告鈴木に渡したところ同被告もこれを横領した。

右契約も前同様取消され保険料全額を返還し且つ損害補償金二万二千四百二十六円八銭計金百二十五万千九百二十六円八銭を支払つた(甲第十号証の一八、一九)

これがため原告会社は被告両名の横領金百二十二万九千五百円と損害補償金として支払つた金二万二千四百二十六円八銭計金百二十五万千九百二十六円八銭の損害を受けた。

(15) 同年四月二十八日訴外木村直吉より保険金百万円の前同保険契約の申込を受け前同方法で保険料金四万円を受取り横領した。被告鈴木は被告伊藤に支給すべき給与金二万五千円と金一万五千円を立替え計金四万円を入金した。

右契約も前同様取消の要求があつたので交渉の結果保険金額二十万円の契約に更めその保険料金八千円は被告伊藤が受領した金四万円中相当額を充当したが保険金八十万円保険料三万八千円の部分についてはこれを取消し右保険料を返還した(甲第十号証の二〇)

これにより原告会社は被告伊藤に給与した金二万円相当の損害を受けた。

(16) 同年七月二十日訴外中山武司より保険金額六十五万円の契約申込を受けて保険料金三万七千百円を受取つて被告鈴木に渡したところ同被告はこれを横領した(甲第十号証のBC)

これがため原告会社は右横領金同額の損害を受けた。

(17) 同年六月十一日訴外大塚繁蔵より保険金額三十万円の契約申込を受け保険料金一万三千二百円を受取つて被告鈴木に渡したところ同被告はこれを横領した(甲第十号証のD)

これがため原告会社は右横領金同額の損害を受けた。

(18) 同年八月二十六日訴外大崎一明より保険金額千三十万円の前同保険契約申込を受け原告会社の領収書を以て保険料金三十七万九百円を受取りこれを横領した。

ところが右契約も前同様取消され保険料金全額を返還した(甲第十号証の二一乃至二三)

これがため原告会社は右横領金相当の損害を受けた。

(19) 同年八月二十五日訴外小宮三郎より保険金額八十万円の前同保険契約の申込を受け前同方法で保険料金三万五千八百円を受取つてこれを横領した。

右契約も前同様右訴外人から取消され保険料全額を返還した(甲第十号証の二四、二五)

これがため原告会社は金三万五千八百円相当の損害を受けた。

(20) 同年八月二十三日訴外長井宏之より保険金額二百五十万円の前同保険契約の申込を受け前同方法で保険料金十万千六百円を受取りこれを横領した。

ところが右契約は融資条件付保険契約のため取消を要求され交渉の結果保険金額二十万円の契約に更めその保険料金九千八百円は被告伊藤が受取つた保険料中相当額を充当し保険料残額金九万千八百円を返還した(甲第十号証の二六、二七)

これがため原告会社は金十万千六百円の損害を受けた。

(21) 同年八月二十五日訴外佐藤勇より保険金八十万円の前同保険契約の申込を受け前同方法で金三万六千百円の保険料を受取りこれを横領した。

右契約も前同様取消され保険料全額を返還した(甲第十号証の二八、二九)

これにより原告会社は金三万六千百円相当の損害を受けた。

(22) 同年八月十五日訴外日下部和より保険金三十五万円の前同保険契約の申込を受け前同方法で保険料金一万七千二百円を受取りこれを横領した。

右契約も前同様取消され保険料全額を返還した(甲第十号証の三〇)

これによつて原告会社は金一万七千二百円相当の損害を受けた。

(23) 同年八月二十五日訴外頼母木きみより保険金百万円の前同保険契約の申込を受け前同方法で保険料金四万円を受取りこれを横領した。

右契約も前同様取消され保険料全額を返還した(甲第十号証の三一、三二)

これにより保険料相当の損害を受けた。

(24) 同年八月十九日訴外菊池東より保険金十万円の契約申込を受け保険料金四千百円を受取つて被告鈴木春一に渡したところ同被告はこれを横領した(甲第十号証のE)

これがため原告会社は右横領金相当の損害を受けた。

(25) 前同日訴外荒井正義より保険金額五万円の契約申込を受け保険料金二千五百円を受取つて被告鈴木春一に渡したところ同被告はこれを横領した(甲第十号証のF)

これによつて原告会社は右横領金相当の損害を受けた。

(26) 同年九月三日訴外高杉恵三より保険金額百万円の前同保険契約の申込を受け前同方法を以て保険料金六万五千円を受取つて被告鈴木春一に渡したところ同被告はこれを横領した。

右契約も前同様取消要求を受け交渉の結果保険金額二十万円の契約に更めその保険料金一万三千円は被告伊藤が受取つた保険料中相当額を充当し残額は返還した。

これによつて原告会社は金六万五千円相当の損害を受けた。(甲第十号証の三三)

(27) 同年六月十五日訴外小林盛次郎より保険金額五十万円の前同契約の申込を受け前同方法を以て保険料二万千五百円を受取り中金二万五百円を被告鈴木春一に渡し残金千円を横領した。

被告鈴木春一は右金二万千五百円から前同給与金一万二千五百円を控除して支給し残額金九千円を原告会社に入金した。

ところが右契約も前同様取消され保険料全額を返還した(甲第十号証の三四)

これにより原告会社は給与金一万二千五百円相当の損害を受けた。

(28) 同年五月十五日訴外渡辺信夫より保険金額三百万円の契約申込を受け保険料金十二万九千円を受取り中金六万四千五百円を横領し残額を被告鈴木春一に渡し同被告は前同給与金三万七千五百円を控除して支給し残額金二万七千円を入金した(甲第十号証のGH)

これにより原告会社は横領金六万四千五百円相当の損害を受けた。

前記(1) 乃至(28)の事実中

(一) 被告鈴木春一の単独横領金員は

(4) の金六千円(8) の金八千六百円(10)の金十八万七千六百円(11)の金五万七千五百円(12)の金二十四万七千五百円(14)の金六十八万千八百円(16)の金三万七千百円(17)の金一万三千二百円(24)の金四千百円(25)の金二千五百円(26)の金六万五千円合計金百三十一万九百円。

(二) 被告伊藤斗福の単独横領金員は

(1) の金六万八千九百円(2) の金一万円(4) の金三万八千円(5) の金四千三百円(6) の金三万九千円(10)の金一万円(11)の金五万円(12)の金十万円(13)の金十四万六千六百円(14)の金五十四万七千七百円(18)の金三十七万九百円(19)の金三万五千八百円(20)の金十万千六百円(21)の金三万六千百円(22)の金一万七千二百円(23)の金四万円(28)の金六万四千五百円

合計金百六十八万六百円。

(三) 被告伊藤斗福が戻入すべき給与金は

(1) の金十万七千五百円(2) の金二万五千円(3) の金七万五千円(5) の金七万二千五百円(6) の二万五千円(7) の金五万円(8) の金九万五千円(9) の金二万五千円(15)の金二万円(27)の金一万二千五百円

合計金五十万七千五百円

(四) 契約の取消により契約者に損害補償として支払つた金員は

(7) の金二千十四円八十銭(14)の金二万二千四百二十六円八銭

合計金二万四千四百四十円八十八銭である。

右(一)の被告鈴木の単独横領金中

(4) の金六千円(16)の金三万七千百円(17)の金一万三千二百円(24)の金四千百円(25)の金二千五百円計金六万二千九百円は正当手続による契約の保険料を横領したもので融資条件付契約の保険料でないから被告伊藤は連帯して賠償の責任はないが残額金百二十四万八千円は被告両名が共同して融資条件付の不正契約を募集した保険料を被告鈴木が横領したものであるから被告伊藤も連帯して賠償する義務がある。

(二)の被告伊藤の単独横領金百六十八万六百円中

(4) の金三万八千円以外は何れも右被告両名が共謀して融資条件付保険契約を募集して受領した保険料を被告伊藤が横領したもので被告鈴木も連帯して賠償する義務がある。

(4) の金三万八千円は不正募集の保険料ではないが被告伊藤は被告鈴木の指揮監督する部下であり、部下の監督不行届のため原告会社の受けた損害は賠償の責に任ずる旨の原告会社との特約に因り被告鈴木も連帯して賠償の義務がある(甲第一号証誓約書)

(三)の被告伊藤が戻入すべき給与金五十万七千五百円は同被告が融資条件付保険契約を募集し原告会社の給与規程に基き契約成立の報酬として支給されたものであるから保険契約が不正契約のため取消されたので右給与規程所定の約旨により返還戻入すべき義務があるのみならず、不当利得金としての返還義務、不法行為に因る損害賠償の義務もある(甲第十二号証)

被告鈴木は右金員につき右給与規程所定の約旨によつて又被告伊藤と共謀して不正募集の契約を正当な募集の如く装い原告会社を欺罔して給与を受けたもので共同不法行為者であるから連帯して支払の義務がある(前同号証)

(四)の原告会社が保険契約者に対し損害補償として支払つた金二万四千四百四十円八十八銭は被告鈴木、伊藤の共同不法行為に因り生じたものであるから右被告両名は連帯して賠償する義務がある。

被告大野木昇は被告鈴木伊藤の融資条件付保険契約の募集に関与協力したもので共同不法行為者の一員であるから原告会社に対して右両被告と連帯して損害賠償の義務がある。

なお自己の部下である被告鈴木伊藤の監督不行届に因つても右両被告の責任の範囲において連帯して賠償の義務がある。

被告川口重三郎同宇佐美鉄造は被告鈴木春一の被告鈴木正五郎同石井仁助は被告伊藤斗福の各身元保証人であるから各その身元本人である、被告鈴木伊藤の責任の範囲において本人と連帯して賠償の義務がある(甲第一、二号証)

(ロ) 被告増田伝は

(1)  昭和二十三年五月二十九日訴外林量より保険金額百万円の前同保険契約の申込を受け前同方法を以て保険料金四万三千円を受取つて被告鈴木春一に渡し同被告は前同給与金二万五千円を控除し残額金一万八千円を原告会社に入金した。

右契約も前同様取消され保険料全額を返還した。(甲第一二号証の一)

これにより原告会社は給与金二万五千円の損害を受けた。

(2)  同年八月五日訴外栗田惣治より保険金額五百五十万円の前同保険契約の申込を受け前同方法を以て保険料金二十五万二千四百円を受取つて被告鈴木春一に渡し同被告はこれを入金せず横領した。

ところが右契約は前同様取消され保険料金全額を返還した。(甲第一二号証の二、三)

これにより原告会社は被告鈴木の横領金相当額の損害を受けた。

(3)  同月二日訴外今村正雄より保険金額三万円の保険契約の申込を受け保険料金千百十円の保険料を受取つて被告鈴木春一に渡し同被告はこれを入金せず横領した。(甲第一二号のA)

これによつて原告会社は被告鈴木の横領金相当額の損害を受けた。

(4)  同月十日訴外青野国太郎より保険金額百万円の前同保険契約の申込を受け前同方法を以て保険料金五万円を受取つて被告鈴木春一に渡し同被告はこれを入金せず横領した。

右契約も前同様取消され保険料全額を返還した。(甲第一二号証の四)

これにより原告会社は前同様金五万円の損害を受けた。

(5)  同年七月一日訴外前田前宝より保険金額十万円の保険契約の申込を受けて保険料金六千六百円を受取つて中金六千円を被告鈴木春一に渡し残額六百円を横領した。

被告鈴木も右金六千円を横領した。(甲第一二号証のB)

これにより原告会社は被告両名の横領金相当額の損害を受けた。

(6)  同年八月十日訴外三船経雄より保険金額五十万円の契約申込を受け保険料金二万九千円の中金一万四千五百円を受取つて被告鈴木春一に渡したところ同被告は入金せずこれを横領した。(甲第一二号証のC)

これにより原告会社は被告鈴木の横領金相当額の損害を受けた。

(7)  同月十七日訴外渋谷正助より保険金額五十万円の前同保険契約の申込を受け前同方法を以て保険料金一万八千五百円を受取つて入金せずこれを横領した。

右契約も前同様取消され保険料全額を返還した。(甲第一二号証の五)

これにより原告会社は金一万八千五百円の損害を受けた。

(8)  同年七月十九日訴外豊島太一より保険金額三万円の保険契約の申込を受け保険料金千二百九十円を受取つてこれを被告鈴木春一に渡し同被告は入金せず横領した。(甲第一二号証のD)

これにより原告会社は被告鈴木の横領額相当の損害を受けた。

(9)  同年六月二十四日訴外住田久一より保険金額五万円の保険契約の申込を受け保険料金二千三百五十円を受取つて被告鈴木春一に渡し同被告はこれを入金せず横領した。(甲第一二号証のE)

これにより原告会社は被告鈴木の横領額相当の損害を受けた。

前記(1) 乃至(9) の事実中

(一)被告鈴木春一が単独で横領した金員は

(2) の金二十五万二千四百円(3) の金千百十円(4) の金五万円(5) の金六千円(6) の金一万四千五百円(8) の金千二百九十円(9) の金二千三百五十円合計金三十二万七千六百五十円

(二)被告増田伝が単独で横領した金員は

(5) の金六百円(7) の金一万八千五百円合計金一万九千百円

(三)被告増田伝が戻入すべき給与金は

(1) の金二万五千円である

右(一)の被告鈴木の単独横領金中

(3) (5) (6) (8) (9) の合計金二万五千二百五十円について被告増田は責任がないこと及残額金三十万二千四百円については被告鈴木と連帯して賠償の義務があることは前記被告鈴木、伊藤の関係における(イ)の(一)と同一理由による。

(二)の被告増田の単独横領金中

(7) の金一万八千五百円及(5) の金六百円について被告鈴木も連帯して賠償の義務あることは前同(二)に記載と同一理由による。

(三)の金二万五千円を被告増田が戻入の義務あること及被告鈴木も連帯責任のあることも前同(三)に記載と同様である。

被告大野木昇、同川口重三郎、同宇佐美鉄造が被告鈴木の責任の範囲において連帯して賠償の義務あること及被告鷲巣幸次郎同増田亨は被告増田伝の身元保証人として同被告と連帯して賠償の責任あることも前同様である。(甲第三号証)

(ハ) 被告増田伝、同河原崎定助は

(1)  昭和二十三年五月七日訴外松岡忠夫より保険金額五百万円の融資条件付保険契約の申込を受け原告会社の保険料領収書を以て保険料金二十二万四千円を受取つて被告鈴木春一に渡し同被告は被告増田、河原崎に支払うべき給与金十二万五千円を控除して支給し残額金九万九千円を原告会社に入金した。

ところが右契約も融資条件付の不正契約のため取消され保険料全額を返還した。(甲第一三号証の一)これに依り原告会社は給与金相当額の損害を受けた。

(2)  同年七月十七日訴外伊藤鐘治郎より保険金額二百万円の前同契約の申込を受け前同方法を以て保険料金八万九千円を受取つてこれを被告鈴木春一に渡し同被告は前同様給与金五万円を控除して支給し残額金三万九千円を入金した。

右契約も前同様取消され保険料全額を返還した。(甲第一三号証の二)

これにより原告会社は給与金相当額の損害を受けた。

(3)  同年八月十六日訴外山田勇より保険金額百万円の前同契約の申込を受け前同方法を以て保険料金四万七千円を受取つて被告鈴木春一に渡したが同被告はこれを入金せず横領した。

右契約も前同様取消され保険料全額を返還した。(甲第一三号証の三)

これにより原告会社は被告鈴木の横領金相当額の損害を受けた。

(4)  同月二十七日訴外沼尾広之助より保険金額三百八十万円の前同契約の申込を受け前同方法を以て保険料金十八万八千五百円を受取り中金九万五千四百円を横領し残額金九万三千百円を被告鈴木春一に渡したところ同被告もこれを横領した。

右契約も前同様取消され保険料金全額を返還した。(甲第一三号の四)

これにより原告会社は右被告等の横領金相当額の損害を受けた。

(5)  同年五月十五日訴外中村梅吉より保険金額二百万円の契約申込を受け保険料金八万三千円を受取つてこれを被告鈴木春一に渡し同被告は保険金百五十万円の保険料相当金六万千五百円を入金し残額金二万千五百円を横領した。(甲第一三号証のA)

これにより原告会社は被告鈴木の横領金相当額の損害を受けた。

前記(1) 乃至(5) の事実中

(一)被告鈴木春一の単独横領金は

(3) の金四万七千円(4) の金九万三千百円(5) の金二万千五百円合計金十六万千六百円

(二)被告増田伝、同河原崎定助両名の横領金は

(4) の金九万五千四百円

(三)被告増田伝、同河原崎定助の戻入すべき給与金は

(1) の金十二万五千円(2) の金五万円合計金十七万五千円について

右被告等が夫々横領金給与金相当額を賠償及戻入すべき義務あることは勿論である。

なお(1) 乃至(5) の損害合計金四十三万二千円につき右被告等三名は連帯して賠償する義務がある。

被告大野木昇、同川口重三郎、同宇佐美鉄造が前記関係においても被告鈴木の責任の範囲において同被告と連帯して賠償の責任あること及

被告増田伝の身元保証人である被告鷲巣幸次郎、同増田亨は増田伝の、被告河原崎定助の身元証人である被告伊藤彰平同谷口常雄は河原崎定助の各責任の範囲で連帯して賠償の義務があることも前同様である。(甲第三、四号証)

(ニ) 被告河原崎定助は

(1)  昭和二十三年三月三十日訴外山田敏雄より保険金額百万円の融資条件付保険契約の申込を受け原告会社の領収書を以て保険料金四万四千円を受取つて被告鈴木春一に渡し同被告は被告河原崎に支払うべき給与金二万五千円を控除して支給し残額金一万九千円を入金した。(甲第一四号証の一)

ところが右契約は融資条件付の不正契約であるため右訴外人から取消の請求を受け交渉の結果、保険金額二十五万円保険料金一万千円相当部分につき契約を継続し残保険料金三万三千円を返還した。

これにより原告会社は給与金二万五千円の中保険料返還部分に相当する金一万八千七百五十円の損害を受けた。

(2)  (一)同年六月三十日訴外堀田善吾より保険金額四百二十万円の前同保険契約の申込を受け保険料金十八万七千三百円を受取つて被告鈴木春一に渡し同被告は中金四万三百円を入金せず横領し残額金は保険金額三百二十万円保険料金十四万七千円相当の給与金八万円を被告河原崎定助に支給し金六万七千円を入金した。

(二)同日被告鈴木春一は右訴外人より別途に保険金額五十万円の契約申込を受け保険料金一万五千円を受取りこれを横領した。

右契約も前同様取消され保険料全額を返還した。(甲第一四号証の二、三)

これにより給与金八万円と被告鈴木の横領金五万五千三百円合計金十三万五千三百円の損害を受けた。

(3)  同年七月二十一日訴外熊岡初彌より保険金額百万円の前同保険契約の申込を受け前同方法を以て保険料金四万千円を受取りこれを被告鈴木春一に渡し同被告はその中保険金額五十万円保険料金二万五百円に相当する被告河原崎に支払うべき給与金一万二千五百円を控除して支給し金八千円は原告会社に入金し残額金二万五百円を横領した。

右契約も前同様取消され保険料全額を返還した。(甲第一四号証の四)

これにより原告会社は給与金一万二千五百円と被告鈴木の横領金二万五百円合計金三万三千円の損害を受けた。

(4)  同年七月九日訴外佐藤春雄より保険金額百万円の前同保険契約の申込を受け前同方法を以て保険料四万千百円を受取り被告鈴木春一に渡し同被告はこれを横領した。

右契約も前同様取消され保険料全額を返還した。(甲第一四号証の五、六)

これにより原告会社は被告鈴木の横領金と同額の損害を受けた。

(5)  同年八月十四日訴外山本実より保険金額二百万円の前同保険契約の申込を受け保険料金八万四千七百円を受取り被告鈴木春一に渡し同被告はこれを入金せず横領した。

右契約も前同様取消され保険料全額を返還した。(甲第一四号証の七)

これにより原告会社は右同額の損害を受けた。

(6)  同年六月三十日訴外金子富次より保険金額二百四十万円の前同保険契約の申込を受け保険料金十万三千二百円を受取り被告鈴木春一に渡し同被告はこれを入金せず横領した。

右契約も前同様取消され保険料全額を返還した。(甲第一四号証の八)

これにより原告会社は右同額の損害を受けた。

(7)  同年二月二十日訴外鈴木俊一より保険金額百万円の前同保険契約の申込を受けて保険料金四万六千円を受取り中金二万三千円を横領し残額金二万三千円を被告鈴木春一に渡し同被告もこれを入金せず横領した。

右契約も前同様取消され保険料全額を返還した。(甲第一四号証の九)

これにより原告会社は被告両名の横領額相当額の損害を受けた。

(8)  同年七月二十三日訴外入沢三四郎より保険金額百万円の前同保険契約の申込を受け保険料金四万四千四百円を受取り中金二万四千四百円を横領し残額金二万円を被告鈴木春一に渡し同被告もこれを入金せず横領した。

右契約も前同様保険金百万円中七十万円分を取消され保険料中金三万千五百円を返還した。(甲第一四号証の一〇)

これより原告会社は右被告両名の横領金相当額の損害を受けた。

前記(1) 乃至(8) の事実中

(一)被告鈴木の単独横領金は

(2) の金五万五千三百円(3) の金二万五百円(4) の金四万千百円(5) の金八万四千七百円(6) の金十万三千二百円(7) の金二万三千円(8) の金二万円合計金三十四万七千八百円。

(二)被告河原崎の単独横領金は

(7) の金二万三千円(8) の金二万四千四百円合計金四万七千四百円

(三)被告河原崎の戻入すべき給与金は(1) の金一万八千七百五十円(2) の金八万円(3) の金一万二千五百円合計金十一万千二百五十円について右被告等が夫々賠償及戻入すべき義務あることは勿論である。

なお右(1) 乃至(8) の事実は何れも融資条件付契約に基く保険料で以上合計金五十万六千四百五十円につき右被告両名が連帯して賠償の義務あること。

被告大野木昇同川口重三郎同宇佐美鉄造が被告鈴木の責任の範囲で同被告と連帯して賠償の義務あること

被告伊藤彰平同谷口常雄は被告河原崎の身元保証人として同被告の責任の範囲で同被告と連帯して賠償の義務あることも前同様である。

(ホ) 被告河原崎定助大西啓介は共同して

(1)  昭和二十三年八月四日訴外増山健太郎より保険金額二百五十万円の融資条件付保険契約の申込を受け原告会社の領収書を以て保険料金十万九千五百円を受取つて被告鈴木春一に渡し同被告はこれを原告会社に入金せず横領した。

ところが右契約は不正契約であるため取消され右保険料全額を返還し且つ損害金として金一万五千円を支払つた。(甲第一五号証の一、二)

これにより原告会社は合計金十二万四千五百円の損害を受けた。

(2)  同年五月十八日訴外佐藤信雄より保険金額二百万円の前同保険契約の申込を受け前同方法を以て保険料の内金二万円を受取つて被告鈴木春一に渡し同被告はこれを入金せず横領した。

右契約も前同様取消され保険料全額を返還した。(甲第一五号証の三)

これにより原告会社は金二万円の損害を受けた。

右(1) (2) の事実中

(一) 被告鈴木春一の横領額は金十二万九千五百円であり右金額につき被告河原崎同大西両名も被告鈴木と連帯して賠償の義務あること

(二) 右被告三名が(1) の損害補償金一万五千円につき連帯して賠償の義務あること。被告大野木昇も被告鈴木春一と連帯して賠償の責任あること。被告川口重三郎同宇佐美鉄造は被告鈴木春一の被告伊藤彰平同谷口常雄は被告河原崎定助の、被告熊崎福雄同鷲巣国太郎は被告大西啓介の各身元保証人として夫々身元本人である被告鈴木、同河原崎、同大西の責任の範囲において賠償の義務あることも前記のとおりである。(甲第五号証)

(ヘ) 被告大西啓介は

(1)  昭和二十三年七月三十日訴外児子豊雄より保険金額百万円の融資条件付保険契約の申込を受け原告会社の領収書を以て保険料金五万七千円を受取り被告鈴木春一と共謀の上原告会社に入金せず横領した。

ところが右契約は不正契約のため取消され保険料全額を返還した(甲第一六号証の一)

これにより原告会社は保険料相当額の損家を受けた。

(2)  同年八月五日訴外花田清志より保険金額五百万円の前同保険契約の申込を受け前同方法を以て保険料金二十四万三千五百円を受取つて被告鈴木春一に渡し同被告は被告大西と共謀の上横領した。

右契約も前同様取消されたので保険料全額を返還した。(甲第一六号証の二)

これにより原告会社は保険料相当額の損害を受けた。

右(1) (2) の事実につき

(一) (1) の被告大西の横領金五万七千円を同被告が(2) の被告鈴木の横領金二十四万三千五百円を同被告が夫々賠償義務あることは当然であるが右被告両名が共同不法行為者として連帯責任のあること。

(二) 被告大野木昇と連帯して賠償の義務あること。

(三) 被告川口重三郎同宇佐美鉄造は被告鈴木の、被告鷲巣国太郎同熊崎福雄は被告大西の各身元保証人として夫々本人たる被告鈴木、大西の責任の範囲において連帯して賠償の義務あることも前記のとおりである。

(ト) 被告増田伝大西啓介は共同して

(1)  昭和二十三年四月五日訴外纐纈正雄より保険金百万円の前同保険契約の申込を受け前同方法を以て保険料金四万四千円を受取つて被告鈴木春一に渡し同被告はその中被告増田、大西両名に支給すべき給与金二万五千円を控除して支給し残額金一万九千円を原告会社に入金した。

ところが右契約も前同様取消され保険料全額を返還した。(甲第一七号証の一)

これによつて原告会社は金二万五千円の損害を受けた。

(2)  同日訴外纐纈茂夫より保険金額二百万円の前同保険契約の申込を受け前同方法を以て保険料金八万六千円を受取つて被告鈴木春一に渡し同被告はその中前同給与金五万円を控除支給して残額金三万六千円を入金した。

右契約も前同様取消され保険料全額を返還した。(甲第一七号証の一)

これによつて原告会社は金五万円の損害を受けた。

(3)  同年四月十三日訴外秋本源次郎より保険金額千二百五十万円の前同保険契約の申込を受け前同方法を以て保険料五十五万六千円の保険料を受取つて被告鈴木春一に渡し同被告はその中前同給与金十八万七千五百円を控除して支給し残額金中十五万七千三百円を入金し金二十一万千二百円を横領した。

右契約も前同様取消され保険料全額を返還した外損害補償金とし金一万四千円を支払つた。(甲第一七号証の二、三、四)

これによつて原告会社は給与金十八万七千五百円、被告鈴木の横領金二十一万千二百円、損害補償金金一万四千円合計金四十一万二千七百円の損害を受けた。

(4)  同年四月二十一日訴外桑原理より保険金額五十万円の前同保険契約の申込を受け前同方法で保険料金二万千五百円を受取つて被告鈴木春一に渡し同被告はその中前同給与金一万二千五百円を控除して支給し残額金九千円を入金した。

右契約も前同様取消されたので原告会社は保険料全額を返還した。(甲第一七号証の五)

これによつて原告会社は給与金相当額の損害を受けた。

(5)  同年六月二十四日訴外大沢武より保険金五百万円の前同保険契約の申込を受け前同方法を以て保険料金二十三万五百円の保険料を受取つて被告鈴木春一に渡し同被告はその中保険金額四百万円保険料十八万七千五百円に相当する前同給与金十万円を控除して支給し残額金中八万七千五百円を原告会社に入金し金四万三千円を横領した。

右契約も前同様取消され保険料全額を返還した。(甲第一七号証の六)

これによつて原告会社は給与金十万円及被告鈴木の横領金四万三千円の損害を受けた。

(6)  同年六月二十三日訴外河出兼治より保険金額四百万円の前同保険契約の申込を受け前同方法を以て保険料金十七万三千円を受取つて被告鈴木春一に渡し同被告はその中前同給与金十万円を控除して支給し残額金七万三千円を入金した。

右契約も前同様取消されたので保険料全額を返還した。

これにより原告会社は給与金相当額の損害を受けた。

(7)  同年五月十一日訴外水落松三郎より保険金額百万円の前同保険契約の申込を受け前同方法を以て保険料金四万八千円を受取つて被告鈴木春一に渡し同被告はその中前同給与金二万五千を控除して支給し残額金二万三千円を入金した。

右契約も前同様取消されたので保険料全額を返還した。

これによつて原告会社は給与金相当額の損害を受けた。

右(1) 乃至(7) の事実中

(一)被告鈴木春一の横領金は

(3) の金二十一万千二百円(5) の金四万三千円合計二十五万四千二百円

(二)被告増田伝同大西啓介が戻入すべき金員は

(1) の金二万五千円(2) の金五万円(3) の金十八万七千五百円(4) の金一万二千五百円(5) の金十万円(6) の金十万円(7) の金二万五千円合計金五十万円

(三)損害補償金は

(3) の金一万四千円

右の中被告鈴木の横領金につき同被告が損害を賠償する義務あることは勿論であるが右被告等三名が前記(一)(二)(三)の合計金七十六万八千二百円につき共同不法行為者として連帯して賠償の義務あること、被告大野木昇が被告鈴木の責任の範囲において賠償の責任あること、被告川口重三郎同宇佐美鉄造が被告鈴木の、被告鷲巣幸次郎同増田亨は被告増田伝の、被告鷲巣国太郎同熊崎福雄は被告大西啓介の各身元保証人として夫々身元本人たる被告等の責任の範囲において本人と連帯して賠償の義務あることも前記のとおりである。

(チ) 被告増田伝同大西啓介同小沢真一は共同して

(1)  昭和二十三年六月七日訴外長谷川勇より保険金額二百万円の前同保険契約の申込を受け前同を以て保険料金八万六千五百五十円を受取つてこれを被告鈴木春一に渡し同被告はその中前同給与金五万円を控除して右被告三名に支給し残額金三万六千五百五十円のみを原告会社に入金した。

右契約も前同様取消され保険料全額を返還したために原告会社は給与金同額の損害を受けた。(甲第一八号証)

右事実につき

右被告等が連帯して支払の義務あること。

被告大野木昇が被告鈴木春一の責任の範囲において、被告川口重三郎同宇佐美鉄造は被告鈴木の、被告鷲巣幸次郎同増田亨は被告増田伝の、被告鷲巣国太郎同熊崎福雄は大西啓介の、被告大石重三郎同関千代は被告小沢真一の各身元保証人として夫々身元本人たる被告等の責任の範囲において連帯して支払の義務があることは前記のとおりである。

(リ) 被告小沢真一は

(1)  昭和二十三年五月二十日訴外鈴木峯太郎より保険金額七拾万円の前同保険契約の申込を受け前同保険料金三万百円を受取つて被告鈴木春一に渡し同被告はその中被告小沢に支給すべき給与金一万七千五百円を控除して支給し残額金一万二千六百円を入金した。(甲第一九号証の一)

右契約も不正契約のため右訴外人から取消の要求を受け交渉の結果保険金額十万円保険料四千三百円相当部分につき契約を継続し残保険料を返還した。

これによつて原告会社は給与金中一万五千円和当の損害を受けた。

(2)  同年七月十九日訴外松本松蔵より保険金額五十万円の前同保険契約の申込を受け前同方法を以て保険料金二万五千円を受取り中金千円を横領し残金二万四千円を被告鈴木春一に渡し同被告もこれを横領した。

右契約も不正契約のため取消され保険料全額を返還した。(甲第一九号証の二)

これによつて原告会社は保険料同額の損害を受けた。

(3)  同年七月三十一日訴外小川元太郎より保険金額三百万円の前同保険契約の申込を受け前同方法を以て保険料十三万六千七百円を受取り中金五千円を横領し残額金十三万千七百円を被告鈴木春一に渡し同被告もこれを横領した。

右契約も不正契約のため取消され保険料全額を返還した。

これにより原告会社は保険料同額の損害を受けた。(甲第一九号証の三、四)

(4)  同年五月三十日訴外市川太一より保険金額百万円の前同保険契約の申込を受け前同方法を以て保険料金四万四千円を受取つて被告鈴木春一に渡し同被告はこれを入金せず横領した。

右契約も前同様取消の要求を受け交渉の結果保険金五十万円保険料金二万二千円の部分につき契約を継続し残保険料二万二千円を返還した。(甲第一九号証の五)

これによつて原告会社は保険料同額の損害を受けた。

(5)  同年八月三十日訴外喜多村一より保険金額百九十万円の前同保険契約の申込を受け前同方法を以て保険料金八万四千円を受取り中金四万四千円を横領し残額金四万円を被告鈴木春一に渡し同被告もこれを横領した。

右契約も前同様取消され保険料全額を返還した。(甲第一九号証の六、七)

これにより原告会社は保険料同額の損害を受けた。

(6)  同年七月十七日訴外森田紋之亟より保険金額二百万円の前同保険契約の申込を受け前同方法を以て保険料金九万四千七百円を受取つて被告鈴木春一に渡し同被告はこれを横領した。

右契約も前同様取消され保険料全額を返還した。(甲第一九号証の八)

これによつて原告会社は保険料同額の損害を受けた。

右(1) 乃至(6) の事実中

(一)被告鈴木春一の横領金は

(2) の金二万四千円(3) の金十三万千七百円(4) の金四万四千円(5) の金四万円(6) の金九万四千七百円合計金三十三万四千四百円

(二)被告小沢真一の横領金は

(2) の金千円(3) の金五千円(5) の金四万四千円合計金五万円

(三)被告小沢真一の戻入すべき給与金は

(1) の金一万五千円

以上(一)(二)の被告両名がその各自の横領額につさ賠償の責任あることは勿論(一)(二)(三)の合計金三十九万九千四百円につき連帯して支払の義務あること。

被告大野木昇は被告鈴木春一の責任の範囲において連帯して、被告川口重三郎同宇佐美鉄造は被告鈴木春一の、被告大石重三郎同関千代は被告小沢真一の各身元保証人として夫々身元本人にたる被告等の責任の範囲において連帯して支払の義務あることは前記のとおりである。

(ヌ) 被告長井世史は

(1)  昭和二十三年六月二日訴外高久斌より保険金額百万円の前同保険契約の申込を受け前同を以て保険料金四万千円を受取り中金二万五百円を被告鈴木春一に渡し同被告はその中被告長井に支給すべき給与金一万二千五百円を控除して支給し残額金八千円を入金した。又金二万五百円は東京第二支社長訴外田代久七に渡し同訴外人はその中前同給与金一万二千五百円を控除して支給し残金八千円を入金した。

右契約も不正契約であるため取消され保険料全額を返還した。(甲第二〇号証の一)

これによつて原告会社は給与金二万五千円相当の損害を受けた。

(2)  同年七月七日訴外若林忠作より保険金三百万円の前同保険契約の申込を受け前同方法を以て保険料金十三万五千二百円を受取つて被告鈴木春一に渡し同被告はこれを入金せず横領した。

右契約も前同様取消され保険料全額を返還した。(甲第二〇号証の二)

これにより原告会社は保険料同額の損害を受けた。

(3)  同年七月五日訴外渡辺三郎より保険金百五十万円の前同保険契約の申込を受け前同方法を以て保険料金八万七千円を受取つて被告鈴木春一に渡し同被告はこれを入金せず横領した。

右契約も前同様取消され保険料全額を返還した。

これにより原告会社は保険料同額の損害を受けた。

(4)  同年七月十九日訴外飯田留吉より保険金額五十万円の前同保険契約の申込を受け前同方法を以て保険料金二万九千五百円を受取つて被告鈴木春一に渡し同被告はこれを入金せず横領した。(甲第二〇号証のA)

これにより原告会社は保険料同額の損害を受けた。

(5)  同年七月二十一日訴外小島清造より保険金額四百万円の前同保険契約の申込を受け前同方法を以て保険料金十七万九千円を受取り中金五万四千円を横領し残額金十二万五千円を被告鈴木春一に渡し同被告もこれを横領した。

右契約も前同様取消され保険料全額を返還した。(甲第二〇号証の六)

これによつて原告会社は保険料同額の損害を受けた。

(6)  同年七月三十一日訴外深川木材株式会社より保険金額四百三十万円の前同保険契約の申込を受け前同方法を以て保険料金二十万千円を受取つて被告鈴木春一に渡し同被告はこれを横領した。

右契約も前同様取消され保険料全額を返還した。(甲第二〇号証の七乃至十一)

これにより原告会社は保険料同額の損害を受けた。

(7)  同年七月八日訴外奈良経之助より保険金額九十万円の前同保険契約の申込を受け前同方法を以て保険料三万九千六百円を受取り中金二万四千二百円を横領し残額金一万五千四百円を被告鈴木春一に渡し同被告もこれを横領した。(甲第二〇号証のB)

これによつて原告会社は保険料同額の損害を受けた。

(8)  同年八月十六日訴外佐々木五一郎より保険金額百五十万円の前同保険契約の申込を受け前同方法を以て保険料金六万八千百円を受取つて被告鈴木春一に渡し同被告はこれを入金せず横領した。

右契約も前同様不正契約のため右訴外人より取消要求を受け交渉の結果保険金二十万円保険料一万三千八百円の部分は継続し残部は取消しその保険料金五万三千四百円を返還した。(甲第二〇号証の十二、十三)

これによつて原告会社は保険料同額の損害を受けた。

(9)  同年七月六日訴外高田福次郎より保険金額百万円の前同保険契約の申込を受け前同方法を以て保険料の内金として金一万円を受取りこれを横領した。

右契約も前同様取消され保険料金一万円を返還した。

これにより原告会社は金一万円の損害を受けた。

(10) 同年六月十七日訴外小沢兵三より保険金額八十万円の前同保険契約の申込を受け前同方法を以て保険料の内金として金二万円を受取り内金一万円を横領し残金一万円を被告鈴木春一に渡し同被告はこれを横領した右契約も同様取消され保険料二万円を返還し且つ損害金として金九百二十円を支払つた。(甲第二〇号証の十五、十六)

これにより原告会社は金二万九百二十円の損害を受けた。

(11) 同年六月十六日訴外榎本桑太郎より保険金額百万円の前同保険契約の申込を受け前同方法を以て保険料金四万九千二百円を受取つて被告鈴木春一に渡し前同給与金二万五千円を控除して支払い残額金二万四千二百円を入金した。

右契約も前同様取消要求を受け交渉の結果保険金額三十万円保険料金一万九千百円相当部分につき契約を継続し残部の保険料金三万百円を返還した。(甲第二〇号証の十七)

これにより原告会社は被告長井世史の給与金中金一万七千五百円相当の損害を受けた。

右(1) 乃至(11)の事実中

(一)被告鈴木春一の横領金は

(2) の金十三万五千二百円(3) の金八万七千円(4) の金二万九千五百円(5) の金十二万五千円(6) の金二十万千円(7) の金一万五千四百円(8) の金六万八千百円(10)の金一万円合計金六十七万千二百円

(二)被告長井世史の横領金は

(2) の金五万四千円(7) の金二万四千二百円(9) の金一万円(10)の金一万円合計金九万八千二百円

(三)被告長井世史の戻入すべき給与金は

(1) の金二万五千円(11)の金一万七千五百円合計金四万二千五百円

(四)損害補償として支払つた金額は

(10)の金九百二十円

右(一)(二)につき被告両名が各横領金相当額の損害賠償の義務あること及(三)(四)につき被告長井が支払いの義務あることは当然であるが(一)乃至(四)の全額につき被告両名が連帯して支払の義務あること。

被告大野木昇が被告鈴木春一の責任の範囲において同被告と連帯して支払の義務あること。

被告川口重三郎同宇佐美鉄造は被告鈴木の身元保証人として同被告と連帯して賠償の義務あることも前記のとおりである。

(ル) 被告仲庄三郎は

(1)  昭和二十三年六月三十日訴外沖中一雄より保険金額百万円の前同保険契約の申込を受け前同方法を以て保険料金の内金三万八千円を受取りこれを横領した。

右契約も不正契約であるため取消要求を受け交渉の結果保険金額四十万円保険料一万八千円の部分につき契約を継続し保険料の残額金二万円を返還した。

これにより原告会社は被告の横領金相当額の損害を受けた。(甲第二一号証)

右事実につき被告仲庄三郎が金三万八千円の賠償義務あることは勿論であるが被告鈴木春一も被告仲と連帯して支払の義務あること。

被告大野木昇も被告鈴木の責任の範囲において同被告と連帯して支払いの義務あること。

被告川口重三郎同宇佐美鉄造は被告鈴木春一の、被告三島信治は被告仲庄三郎の各身元保証人として夫々身元本人たる右被告両名と連帯して支払いの義務あることも前記のとおりである。(甲第七号証)

(ヲ) 被告河村秀明は

(1)  昭和二十三年六月二十四日訴外渡辺東一より保険金額百万円の前同保険契約の申込を受け前同方法を以て保険料金四万四千円を受取つて被告鈴木春一に渡し同被告はその中前同給与金二万五千円を控除して支給し残額金一万九千円を入金した。

右契約も不正契約あるため取消の要求を受け交渉の結果保険金額二十万円保険料金八千八百円の部分につき契約を継続し保険料残額金三万五千二百円を返還した。(甲第二二号証の一)

これにより原告会社は給与金中金二万円の損害を受けた。

(2)  同年七月五日訴外上田猛男より保険金額百万円の前同保険契約の申込を受け前同方法を以て保険料金四万千円を受取つて被告鈴木春一に渡し同被告はその中前同給与金二万五千円を控除して支給し残額金一万六千円を入金した。

右契約も前同様取消され保険料全額を返還した。(甲第二二号証の二)

これによつて原告会社は給与金二万五千円相当の損害を受けた。

(3)  同年六月二十九日訴外中村清より保険金額百万円の前同保険契約の申込を受け前同方法を以て保険料金四万四千円を受取つて被告鈴木春一に渡し同被告はその中前同給与金二万五千円を控除して支給し残額金一万九千円を入金した。(甲第二二号証の三)右契約も前同様取消要求を受け交渉の結果保険金五十万円保険料金二万二千円の部分につき契約を継続し保険料の残額金二万二千円を返還した。

これにより原告会社は給与金一万二千五百円相当の損害を受けた。

(4)  同年六月二十四日訴外西田稔より保険金額百万円の前同保険契約の申込を受け前同方法を以て保険料金四万四千円を受取つて被告鈴木春一に渡し同被告はその中前同給与金二万五千円を控除して支給し残額金一万九千円を入金した。(甲第二二号証の四)

右契約も前同様取消要求を受け交渉の結果保険金額五万円保険料金二千二百円の部分につき契約を継続し保険料の残額金四万千八百円を返還した。

これによつて原告会社は給与金二万三千七百五十円相当の損害を受けた。

(5)  同年八月十四日訴外神田武夫より保険金額五百二十六万円の前同保険契約の申込を受け前同方法を以て保険料金二十一万七千三百二十円を受取つて被告鈴木春一に渡し同被告はこれを横領した。(甲第二二号証の五)

右契約も前同様取消され保険料全額を返還した。

これによつて原告会社は被告鈴木春一の横領金相当額の損害を受けた。

(6)  同年六月十五日訴外山上善吉より保険金額百五十万円の前同保険契約の申込を受け前同方法を以て保険料金六万七千九百円の保険料を受取つて被告鈴木春一に渡し同被告はその中前同給与金三万七千五百円を控除して支給し残額金三万四百円を入金した。(甲第二二号証の六)

右契約も前同様取消要求を受け交渉の結果保険金額十万円保険料五千円の部分につき契約を継続し保険料の残額金六万二千五百円を返還した。

これによつて原告会社は給与金三万五千円相当の損害を受けた。

右(1) 乃至(6) の事実中

(一)被告鈴木春一の横領金は

(5) の金二十一万七千三百二十円

(二)被告河村秀明の戻入すべき給与金は

(1) の金二万円(2) の金二万五千円(3) の金一万二千五百円(4) の金二万三千七百五十円(6) の金三万五千円合計金十一万六千二百五十円で被告鈴木が(一)被告河村が(二)の金員を各支払う義務あることは勿論右被告両名が右(一)(二)につき連帯して支払の義務あること被告大野木昇が被告鈴木の責任の範囲で同被告と連帯して支払の義務あること及被告川口重三郎同宇佐美鉄造が被告鈴木の身元保証人として被告鈴木と連帯して支払の義務あることも前記のとおりである。

(ワ) 被告大西啓介同河村秀明同仲庄三郎は共同して昭和二十三年七月一日訴外渡辺光枝(東洋美術)より前同保険契約の申込を受け前同を以て保険料の内金として金百万円を受取り内金五十万円を右被告等三名が横領し残額金五十万円を被告鈴木春一に渡し同被告もこれを横領した。

右契約も前同様取消され保険料全額を返還した。(甲第二三号証)ために原告会社は被告大西、河村、仲の共同横領により金五十万円、被告鈴木の横領により金五十万円の損害を受けた。

右事実につき被告鈴木春一は金五十万円他の被告三名は連帯して金五十万円の賠償義務あることは勿論であるが、右被告等四名は連帯して金百万円の賠償義務あること、被告大野木昇が被告鈴木の責任の範囲で同被告と連帯して賠償の義務あること、被告川口重三郎同宇佐美鉄造は被告鈴木春一の、被告鷲巣国太郎同熊崎福雄は被告大西啓介の、被告三島信治は被告仲庄三郎の各身元保証人として夫々身元本人の責任の範囲において連帯して支払の義務あることも前記のとおりである。(甲第五、七号証)

(カ) 被告仲庄三郎同河村秀明は共同して

(1)  昭和二十三年四月十三日訴外大西桓彦より保険金額五百九十五万円の前同保険契約の申込を受け原告会社の領収書を以て保険料金二十二万二千五十円を受取り内金十七万円を被告鈴木春一に渡し残額金五万二千五十円を横領した。

被告鈴木は右金十七万円と被告仲同河村のため金二万八千円を立替へ合計金十九万八千円より前同給与金十三万二千五百円を控除し残金六万五千五百円を入金した。

これにより原告会社は被告仲、河村両名の横領金中二万四千五十円相当額の損害を受けた。

(2)  同年三月七日訴外吉川忠雄より保険金額二百万円の前同保険契約の申込を受け前同方法を以て保険料金七万五千円を受取つて被告鈴木春一に渡し同被告は保険金額百五十万円保険料金五万六千五百円相当の給与金三万七千五百円を控除して被告仲、河村両名に支給し残額中金一万九千円を原告会社に入金し金一万八千五百円は入金せず横領した。

右契約も前同様取消され保険料全額を返還した。(甲第二四号証の一)

これにより原告会社は被告鈴木の横領金一万八千五百円給与金三万七千五百円合計金五万六千円の損害を受けた。

(3)  同年六月四日訴外鈴木幹一より保険金額百万円の前同保険契約の申込を受け前同方法を以て保険料金七万六千円を受取つて被告鈴木春一に渡し同被告は前同給与金二万五千円を控除して支給し残金五万千円を入金した。

右契約も前同様取消され保険料全額を返還した。(甲第二四号証の二)

これにより原告会社は給与金相当額の損害を受けた。

(4)  同年六月十日訴外萩原徳基より保険金額千五十万円の前同保険契約の申込を受け前同方法を以て保険料金四十三万千円を受取り内金三十三万千円を被告鈴木春一に渡し残額金十万円を横領した。(甲第二四号証の三)

被告鈴木は右金員中保険金額六百八十万円保険料二十九万三千円相当の前同給与金十七万円を控除して支払い金十二万三千四百円を原告会社に入金し金三万七千六百円を横領した。

右契約も前同様取消され保険料全額を返還した外損害補償金として金六万千六百円を支払つた。(甲第二四号証の四)

これにより原告会社は給与金十七万円、被告鈴木の横領金三万七千六百円、被告仲、河村両名の横領金十万円、損害補償金六万千六百円合計金三十六万九千二百円の損害を受けた。

(5)  同年六月十八日訴外福島寛より保険金額百万円の前同保険契約の申込を受け前同方法を以て保険料金七万千五百円を受取り内金七万千円を被告鈴木春一に渡し残金五百円を横領した。

被告鈴木も右金員を横領した。(甲第二四号証の五、六)

右契約も前同様取消され保険料全額を返還した。

これによつて原告会社は被告等の横領額相当の損害を受けた。

(6)  同年八月十七日訴外与田四郎より保険金額百万円の前同保険契約の申込を受け前同方法を以て保険料金七万五百円を受取つて被告鈴木春一に渡したところ同被告はこれを横領した。

右契約も前同様取消され保険料全額を返還した。(甲第二四号証の七、八)

これにより原告会社は保険料相当額の損害を受けた。

(7)  同年四月二十四日訴外後藤周四郎より保険金額五十万円の前同保険契約の申込を受け前同方法を以て保険料金一万九千円を受取り内金四千円を横領し残額金一万五千円を被告鈴木春一に渡した。

被告鈴木は右金一万五千円と被告仲、河村両名の横領金四千円の合計金一万九千円中から前同給与金一万二千五百円を控除して支給し残額金六千五百円を入金した。

右契約も前同様取消され保険料全額を返還した。(甲第二四号証の九)

これにより原告会社は給与金一万二千五百円相当の損害を受けた。

右(1) 乃至(7) の事実中

(一)被告鈴木春一の横領金は

(2) の金一万八千五百円(4) の金三万七千六百円(5) の金七万千円(6) の金七万五百円合計金十九万七千六百円

(二)被告仲、河村両名の横領金は

(1) の金二万四千五十円(4) の金十万円(5) の金五百円合計金十二万四千五百五十円

(三)被告仲、河村両名の戻入すべき給与金は

(2) の金三万七千五百円(3) の金二万五千円(4) の金十七万円(7) の金一万二千五百円合計金二十四万五千円

(四)損害補償金は

(4) の金六万千六百円

(ヨ) 被告仲庄三郎同河村秀明同増田伝は共同して

昭和二十三年五月二十九日訴外佐々木六郎より保険金額六百万円の前同保険契約の申込を受け前同方法を以て保険料二十七万四千円を受取りこれに金三千円を加算し金二十七万七千円を被告鈴木春一に渡し同被告はその中保険金額五百万円保険料二十三万六千円相当の被告仲、河村、増田三名に支払うべき給与金十二万五千円を控除して支払い残額金中金十一万千円を原告会社に入金し金三万八千円を横領した。

右契約も不正契約のため取消の要求を受け交渉の結果保険金額九十万円保険料金四万千四百六十円の契約に更め保険料の残額金二十三万二千五百四十円を返還した。(甲第二五号証)

これによつて原告会社は給与金十万二千五百円及被告鈴木の横領金三万八千円相当の損害を受けた。

右損害金合計十四万五百円につき右被告等四名が連帯して賠償の義務あること。

被告大野木昇同川口重三郎同宇佐美鉄造が被告鈴木の責任の範囲において同被告と連帯して、被告三島信治が被告仲の責任の範囲において同被告と連帯して、被告鷲巣幸次郎同増田亨は被告増田伝の責任の範囲において同被告と連帯して夫々賠償の義務あることも前同様である。

(タ) 被告角田又治は

(1)  昭和二十三年八月六日訴外石川憲太郎より保険金額二百万円の前同保険契約の申込を受け前同方法を以て保険料金八万四千円を受取り内金千円を横領し残額金八万三千円を被告鈴木春一に渡したところ同被告もこれを横領した。(甲第二六号証の一)

右契約も前同様取消され保険料全額を返還した。

これにより原告会社は保険料相当額の損害を受けた。

(2)  同年八月十日訴外糸川喜代松より保険金額三百万円の前同保険契約の申込を受け前同方法を以て保険料金十三万九千百円を受取つて被告鈴木春一に渡したところ同被告はこれを横領した。(甲第二六号証の二)

右契約も前同様取消され保険料全額を返還した。

これによつて原告会社は保険料相当の損害を受けた。

(3)  同年五月二十七日訴外野中哲郎より保険金額二百万円の前同保険契約の申込を受け前同方法を以て保険料金七万七千九百円の保険料を受取り被告鈴木春一に渡し同被告はその中前同給与金五万円を控除して支給し残額金二万七千九百円を入金した。

右契約も前同様取消され保険料全額を返還し且つ損害補償金として金一万四千六百八十五円を支払つた。(甲第二六号証の三)

これによつて原告会社は給与金五万円と損害補償金一万四千六百八十五円合計金六万四千六百八十五円の損害を受けた。

(4)  同年八月二十五日訴外吉村幸司より保険金額十万円の前同保険契約の申込を受け前同方法を以て保険料金三千九百円を受取りこれを横領した。

右契約も前同様取消され保険料全額を返還した。(甲第二六号証の四)

これによつて原告会社は保険料相当の損害を受けた。

(5)  同年四月五日訴外木村兼松より保険金額百万円の保険契約の申込を受け前同方法を以て保険料金四万三千円を受取りこれを被告鈴木春一に渡し同被告はその中前同給与金二万五千円を控除して支給し残額金一万八千円を入金した。

右契約も前同様取消され保険料全額を返還した。(甲第二六号証の五)

これによつて原告会社は給与金相当額の損害を受けた。

(6)  同年八月二十六日訴外坂本真男より保険金額三万円の保険契約の申込を受け前同方法を以て保険料金千百十円を受取りこれを横領した。(甲第二六号証のA)

これによつて原告会社は右横領金相当額の損害を受けた。

以上(1) 乃至(6) の事実中

(一)被告鈴木春一の横領金は

(1) の金八万三千円(2) の金十三万九千百円合計金二十二万二千百円

(二)被告角田又治の横領金は

(1) の金千円(4) の金三千九百円(6) の金千百十円合計金六千十円

(三)被告角田又治の戻入すべき給与金は

(3) の金五万円(5) の金二万五千円合計金七万五千円

(四)損害補償金は

(3) の金一万四千六百八十五円

右(一)乃至(四)につき被告両名が連帯して賠償の義務あること。

被告大野木昇同川口重三郎同宇佐美鉄造が被告鈴木の責任の範囲において同被告と連帯して、

被告志村九内は被告角田の身元保証人として同被告と連帯して夫々賠償の義務あることも前同様である。(甲第八号証)

(レ)被告角田又治増田伝は共同して

(1)  昭和二十三年四月十二日訴外高坂公一より保険金額百万円の前同保険契約の申込を受け前同方法を以て保険料金四万三千六百円を受取り内金四万三千円を被告鈴木春一に渡し同被告はその中前同給与金二万五千円を控除して支給し金一万八千六百円を入金した。

右契約も前同様取消の要求を受け交渉の結果保険金額四十万円保険料二万千四百円の契約に更め残保険料を返還した。(甲第二七号証の一)

これによつて原告会社は給与金中金一万五千円相当の損害を受けた。

(2)  同年四月十九日訴外村松金蔵より保険金額五十万円の前同保険契約の申込を受け前同方法を以て保険料金二万二千円を受取つて被告鈴木春一に渡し同被告はその内前同給与金一万二千五百円を控除して支給し残額を入金した。

右契約も前同様取消の要求を受け交渉の結果保険金額十万円保険料四千四百円の契約に更め保険料の残額を返還した。(甲第二七号証の二)

これにより原告会社は給与金中金一万円相当の損害を受けた。

以上(1) (2) の被告角田、同増田両名が戻入すべき給与金二万五千円につき右被告等及被告鈴木春一も連帯して賠償の義務あること。

被告大野木昇同川口重三郎同宇佐美鉄造が被告鈴木の責任の範囲において同被告と連帯して、被告志村九内は被告角田と連帯して、被告鷲巣幸次郎同増田亨は被告増田伝と連帯して夫々賠償の義務あることも前同様である。

(ソ) 被告大川博は

(1)  昭和二十三年五月十九日訴外渡辺淳より保険金額五十万円の前同保険契約の申込を受け前同方法を以て保険料金二万千五百円を受取り給与金一万二千五百円を差引き残額金九千円を入金した。

右契約も前同様取消され保険料全額を返還した。(甲第二八号証の一)

これにより原告会社は給与金相当額の損害を受けた。

(2)  同年七月二日訴外田口精一より保険金額千二十万円の前同保険契約の申込を受け前同方法を以て保険料金四十八万千七百円を受取つて被告鈴木春一に渡し同被告はその内保険金額八百六十万円保険料金四十万千円相当の前同給与金二十一万五千円を控除して支給し金八万七百円を横領し残額金十八万六千円を入金した。

右契約も前同様取消され保険料全額を返還した。(甲第二八号証の三)

これにより原告会社は給与金及横領金合計二十九万五千七百円相当の損害を受けた。

(3)  同年日時不詳訴外伊藤豊次郎より保険金額六万円の保険契約の申込を受け保険料金二千九百四十円を受取つてこれを横領した(甲第二八号証のA)

以上(1) 乃至(3) の事実中

被告大川の戻入すべき給与金は(1) の金一万二千五百円(2) の金二十一万五千円合計金二十二万七千五百円及、被告鈴木の横領金は(2) の金八万七百円につき右被告両名が連帯して賠償の義務あること(3) の被告大川の横領金二千九百四十円についても被告鈴木は監督責任者として及原告会社との特約に因り連帯して賠償の義務あること。

被告大野木昇同川口重三郎同宇佐美鉄造が被告鈴木の責任の範囲において同被告と連帯して支払の義務あることも前同様である。

(ツ) 被告二の関昇は

(1)  昭和二十三年六月二十三日訴外中元寺昇より保険金額四百五十万円の前同保険契約の申込を受け前同方法を以て保険料金二十万二千二百四十円を受取つて被告鈴木春一に渡し同被告はその内保険金額三百五十万円保険料十五万二千二百円相当につき前同給与金八万七千五百円を控除して支払い金五万四十円を横領し残額金六万四千七百円を入金した。

右契約も前同様取消され保険料全額を返還した。(甲第二九号証の一、二、三)

これにより原告会社は給与金及横領金合計金十三万七千五百四十円相当の損害を受けた。

(2)  同年七月十九日訴外佐藤安弘より保険金額二十五万円の前同保険契約の申込を受け前同方法を以て保険料金一万千二百五十円を受取りこれを横領した。

右契約も前同様取消され保険料全額を返還した。(甲第二九号証の四)

これにより原告会社は右被告の横領額相当の損害を受けた。

(3)  同年日時不詳訴外伴輝雄より保険金額六十万円の保険契約の申込を受け保険料の内金一万円を受取つてこれを横領した。(甲第二号証のAR)

これにより原告会社は右被告の横領額相当の損害を受けた。

以上(1) 乃至(3) の事実につき

被告鈴木の横領金、(1) の金五万四十円、被告二の関の横領金、(2) の金一万千二百五十円(3) の金一万円合計金二万千二百五十円、同被告の戻入すべき給与金八万七千五百円につき右被告両名が連帯して賠償の義務あること。

被告大野木昇同川口重三郎同宇佐美鉄造が被告鈴木の責任の範囲において同被告と連帯して支払の義務あることも前同様である。

以上の損害金につき被告等に対し請求の趣旨に記載の金員の支払い並仮執行の宣言を求める。

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